【文スト】夫婦の日和

愛し愛され【夫婦論】〔リク〕 ページ5

玄関の扉を開け、「ただいま」と、気を緩めながら靴を脱いだ。

嗚呼、良い匂いがする。
私の好物の匂いだ。


「・・・A、ただいま」

「作之助さん。おかえりなさい」


鍋をかき混ぜる、愛しい妻。
私は妻を後ろから抱きつき、彼女の頭に顎を乗せた。


「・・・咖喱か」

「好きでしょう？咖喱飯」

「お前の方が好きだがな」


私がさらり、とそう言うと、Aは顔を赤くして「阿保ゥ・・・」と力なく、私を罵倒した。


「今日も誰も殺さなかったんですか？」

「嗚呼。誰も殺してない」



Aは私の、ごつごつした手に優しく触れ、微笑んだ。


「・・・やっぱ、作之助さんの手、大きくて好きや・・・」


私は、顔に熱が集まるのがわかった。
Aは「フフ」と笑うと、火を止めて、私の方を向き、頬を撫でながら


「耳まで真っ赤・・・」


と言った。



やはり、私は、・・・否、俺は、Aを愛している。




(・・・このまま、時が止まれば良いのに・・・)




莫迦な事を考えたな、と自分でも思う。
だが、そう考えるほど、俺は、この幸せを手放したくないのだろう。






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