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おぶられてはそろそろ吉原に着く、と神威が口を開く


『………神威』

「なに?」

『…助けに来てくれて、ありがと』


そう言えばフッと笑う神威が言葉を続けた


「Aに一生会えなくなったらって考えただけで気が狂いそうだったさ」

『そ、そんなに?』

「本当だよ。ここ数ヶ月、Aの事を忘れられなかった」

『…うん』


その言葉が凄く嬉しくて、唇をギュッと噛み締める


『私、知り合いが増えたの』

歌舞伎町での出来事を、会っていなかった間の出来事を
全部神威に話す


『誰と何をしてても神威の存在が忘れられなくて不意に思い出したりして…』


「嬉しいけど、なんか複雑」

『え、どうして?」

「Aに触れたり笑いかけられたりするのが凄く嫌だ」


嫉妬心か_______

今まで散々好きでもない男達に触れられたと言うのに、綺麗と言われているみたいで。
ほんのり顔に熱が集中するが、伝わらないように顔をふるふると横に振る


その時、いきなり歩く足を止めた神威


「……帰したくないな」

『か、神威…?』


「A」


『…なに?』


「やっぱり俺に着いてくるのは嫌?」


『……』


「俺、Aが好きだ」


その言葉にまた涙が溢れそうになり、首に回していた腕は
自分の顔を隠すように包み込む


『…あ、ありがとう』


「ずっと一緒にいる、離してやらない」


『…うん』

「だからそこ(吉原)から出てさ。今度こそ連れ出してやるよ」


目の前に少し見えるその街を指して、神威はそう言った



『………私を連れ出して_______



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作者名:キマイ | 作成日時:2023年3月19日 23時

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