好きだけじゃ、超えられない壁がある【坂田銀時】

35話 ページ37

銀時side


包帯とは、きっとこの間切られたところの事だろう。それを巻き直すってなんだ。

｢なんで俺が！！｣


｢いつもはお妙にやってもらってるけど、今日いないし、神楽にやってもらうにしてももう寝てるし！銀時しかいないじゃん！！｣


こいつ本当に頼む気あるのかというくらいの勢いで言ってくる。


｢じゃあ、明日の朝神楽にやってもらえよ！｣


｢これ言ったら絶対怒ると思うんだけどさ！さっき姫様との戦いで少々傷口が開いたんです！非常事態です！だから、巻き直して！｣


｢傷口開いた！？｣


馬鹿なのこいつ！？なんでそれを今の今まで言わなかったの！？第1に、傷口が開くまで動くなと言いたいところだ。あそこまで真剣にぶつからなくても、こいつなら簡単に勝てたはずだ。


でもこのまま放置しておけば、菌が傷口から入ってしまうと考えると…。俺がやるしかなくなる。


｢…しょうがなくだからな！二度とやんねーぞ！！｣


｢…！！ありがとう！｣


Aは驚いたようにそう言うと、包帯などの、傷の処置に使うものを用意しだした。

Aは着ている浴衣の帯より上の部分を脱いだ。(もちろんキャミソールを着用している。)


今までつけていた包帯を外してみると、やはり少し赤く血がついていた。


(…本当に開いてやがる)


ぱっくりとまではいかないが、すごく痛々しい。


持ってきた消毒液で、傷口を綺麗にする。消毒液を傷口に当てるたびに、染みて痛そうな顔をするA。確かこいつは消毒液が大の苦手だった。


｢明日は大人しくしてろよ！｣

｢大人しくしてたいところだけど、明日も姫様に巻き込まれるからなぁ…｣


…そういえばそうだった。Aを巻き込んだ沖田くんを恨むと同時に、Aの細いくびれに目がいってしまった。


(無防備って、こういつやつのことを言うんだな)


俺は小心者なので、無防備なAがいた所で何も出来ないのだが…。



包帯を巻きながら、こいつの無防備さに呆れた今日この頃だった。

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