好きだけじゃ、超えられない壁がある【坂田銀時】

10話 ページ12

…




神楽からの突然の報告があってから、私はキャバクラでよく手伝いをするようになった。




理由はただ一つ。なにかしていれば、銀時のことを思い出さなくて済むから。考えなくて済むから。お妙がいてもいなくても、どんな客でも相手をするようになった。




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現に今、顔はかっこいいのに中身がかなりナヨナヨしているお客さんを相手にしている。この人は中々女性との出会いに恵まれず、上司に紹介されこの店に来たそうだ。







｢ねぇ、Aちゃん。俺どうすればいいかな…。俺だって彼女ほしいよ…｣


｢そうですねぇ…。女性との出会いの場があればいいんですけど…。｣




結構ガチで悩んでそうなこの人相談に私は自然と一緒に悩んでしまっていた。まぁ、恋愛といっても私は銀時以外に恋したことなんてないんだけど…。


…また銀時関係の話題になってしまった。最近何をしても、何を見ても結局最後は銀時に繋がってしまうのだ。神楽にあの話を聞いてからは、できるだけ会わないよう外出を最低限に抑えた。


あ、お客さんのこと忘れてた。ついつい仕事中なのを忘れて、自分の世界に入っていた。


しかし、その人は私が解決策を一生懸命考えていると思い込んだようで…


｢…俺初めてなんです。こんな俺と一緒になにか考えてくれる女性がいるなんて…。｣

｢あ、いや、｣


口を開きかけたところで一旦止まる。

｢すいません、あなたの事は微塵も考えていませんでした｣なんてこと私に言えるはずもなく、｢お客さんにはいい出会いをして欲しいですからねぇ｣と思ってもいないことを言ってしまった。



(…ごめんねお客さん。私今人様の恋に本気で悩めるほどの余裕ないんだ)


心の中で謝罪をし、お客さんに酌をした。

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