検索窓
今日:10 hit、昨日:17 hit、合計:72,339 hit

月夜に跳ねるは殺戮の兎 ページ50

.




「「総悟ォォォォ万事屋ァァァァァァ!!!」」



二人の男の血気盛んな大声と共に、黒い団体が出入口からわっと押し寄せた。


「遅すぎまさァ近藤さん、と土方コノヤロー」


二人の叫びに沖田くんが相変わらずの声調で呼応する。


しかし、そのセリフにお決まりの土方さんのツッコミが入ることはなく、代わりに焦燥した形相の二人の大音声が再び響いた。



「「避けろォォォォォォォォォ!!!」」


よく見ると二人に限らず、真選組全体が酷い負傷をしていた。


それに気を取られた私は、気づいた時には誰かに体を担がれ、銃口らしき番傘の先端をこめかみに当てられていた。



「「「「A/さん!!!」」」」



皆は咄嗟に私の名前を一斉に叫ぶと同時に、ピタリと動きを止めた。



外界の音も聞こえなくなるほど心臓が鳴り響き、恐怖心を抑えながら、私は恐る恐るその男の顔を覗いた。



そして全身の血がサーッと遠のいたのを感じた。



青白い月の光に照らされた朱色の髪の毛が、透けるように白い頬に触れる。


そんな幻想的な美しさとは裏腹に、圧倒するような殺気を放つ蒼い目が、ギラギラと眼光を光らせていた。



(神威...)



ふとその蒼い瞳が私を捉え、前にも見た無機質な笑みを浮かべて口を開いた。


「やっと捕まえた。もう二度と逃がさないよ、竜胆。追いかけっこはこれでお終いだ。」


神威の言葉に私達は耳を疑い、眉間に皺を寄せた。



(私を、竜胆だと勘違いしてる....?)



しかし、そんな事を悟ったところで私は彼に担がれたまま、屋上の中心から徐々に外側へと離れていく。


(な、何する気....)



ついに屋上の縁まで来ると、神威はそのまま足を踏み外し、二人同時に夜の空気に飛び込んだ。


その瞬間、私の名前を叫びながら皆が向かってくるのが目に入った。




中でも一際速く私に手を伸ばした影があった。



(竜胆....!?)



「ダメだ竜胆ッ!!!」



銀さんの呼び止めた声が届いた時には、神威は飛び込んできた竜胆を両手で掴み、代わりに私を手放した。



揺れる朱色の三つ編みと、絶望に陥る竜胆の瞳が目に映った。


二人の影と月を見つめながら、また呆然と悟った。



(騙されたんだな.....)



この後どうなるかを全身で感じていた私は、もがく事も無く、闇に吸い込まれながらゆっくりと瞳を閉じた。


その刹那、最後に見えたのが誰なのかは分からなかったが、



微かに見えた白銀は、世界で一番綺麗な色をしていた。

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←本物の英雄はそう簡単に英雄をやめたりしない



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (108 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
247人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。