月夜に跳ねるは殺戮の兎 ページ50
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「「総悟ォォォォ万事屋ァァァァァァ!!!」」
二人の男の血気盛んな大声と共に、黒い団体が出入口からわっと押し寄せた。
「遅すぎまさァ近藤さん、と土方コノヤロー」
二人の叫びに沖田くんが相変わらずの声調で呼応する。
しかし、そのセリフにお決まりの土方さんのツッコミが入ることはなく、代わりに焦燥した形相の二人の大音声が再び響いた。
「「避けろォォォォォォォォォ!!!」」
よく見ると二人に限らず、真選組全体が酷い負傷をしていた。
それに気を取られた私は、気づいた時には誰かに体を担がれ、銃口らしき番傘の先端をこめかみに当てられていた。
「「「「A/さん!!!」」」」
皆は咄嗟に私の名前を一斉に叫ぶと同時に、ピタリと動きを止めた。
外界の音も聞こえなくなるほど心臓が鳴り響き、恐怖心を抑えながら、私は恐る恐るその男の顔を覗いた。
そして全身の血がサーッと遠のいたのを感じた。
青白い月の光に照らされた朱色の髪の毛が、透けるように白い頬に触れる。
そんな幻想的な美しさとは裏腹に、圧倒するような殺気を放つ蒼い目が、ギラギラと眼光を光らせていた。
(神威...)
ふとその蒼い瞳が私を捉え、前にも見た無機質な笑みを浮かべて口を開いた。
「やっと捕まえた。もう二度と逃がさないよ、竜胆。追いかけっこはこれでお終いだ。」
神威の言葉に私達は耳を疑い、眉間に皺を寄せた。
(私を、竜胆だと勘違いしてる....?)
しかし、そんな事を悟ったところで私は彼に担がれたまま、屋上の中心から徐々に外側へと離れていく。
(な、何する気....)
ついに屋上の縁まで来ると、神威はそのまま足を踏み外し、二人同時に夜の空気に飛び込んだ。
その瞬間、私の名前を叫びながら皆が向かってくるのが目に入った。
中でも一際速く私に手を伸ばした影があった。
(竜胆....!?)
「ダメだ竜胆ッ!!!」
銀さんの呼び止めた声が届いた時には、神威は飛び込んできた竜胆を両手で掴み、代わりに私を手放した。
揺れる朱色の三つ編みと、絶望に陥る竜胆の瞳が目に映った。
二人の影と月を見つめながら、また呆然と悟った。
(騙されたんだな.....)
この後どうなるかを全身で感じていた私は、もがく事も無く、闇に吸い込まれながらゆっくりと瞳を閉じた。
その刹那、最後に見えたのが誰なのかは分からなかったが、
微かに見えた白銀は、世界で一番綺麗な色をしていた。
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紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時