愛したのは先生、憧れたのは貴方 ページ46
〜竜胆side〜
Aという名の"合鍵"が、自分から手を切ったことで繋がっている私の手も同じ様に切れた。
全てを忘れてた私は針に刺された程度の痛みで我に返った。
《Aは過剰なほど痛がって喚いているが、それは私の体が改造されたからなのか、今までの人体実験に慣れてるからなのか、単にあの子が痛みに慣れてないだけなのかは知らない。》
(血.....赤い......私の血だ.....少し痛いな)
中指の先からぽたぽたと地面に赤い点を付けていく。
その赤い血を見ていると、一つの記憶がどこからとなく蘇った。
『竜胆、痛いですか。痛いということは、生きている証拠ですよ。』
(先生...?)
『そしてまた一段と強くなるという証なのです。痛みを乗り越えて得るものほど強いものはありません。』
『だから、これしきのことで弱音を吐かない。これからもっと強くなる事ができるのは今を生きる者だけなんですよ。』
(先生.....)
『だからどれだけ苦しくても、痛くても、死にたいなんて言わないで下さい、私の為にも。』
(こんな事、何で今、今思い出すの....)
俯けば、足元で驚いた蒼い瞳が私の笑いながら泣く汚い表情を見据えていた。
「ぎ、んちゃ....」
そのいたいけな少女が小さく声を発して目を他へ逸らしたかと思うと、
身体が温もりに包まれる感覚がした。
「.....え」
私を強く抱き締めるのは、私が何度も殺しかけた憎くて、愛しくて、懐かしい銀時だった。
その瞬間、堰き止めていたダムが決壊するように涙がぼろぼろと頬を流れ始めた。
ひゅるりと秋の夜風が頬を撫で、同時に小さく銀色の毛を揺らした。
少し傾いた月が一面の赤を照らし、時が止まったかのように静まり返った。
「お前、何の為に松陽に剣術教わったんだ?」
知らない内に大人びた男の低い声が、耳元で優しく響いた。
十数年以来の人の温もりを逃がさないようにと、大切なものを失わないようにと、
背中に手を回して僅かに抱き寄せた。
止まらない熱い涙を流したまま、私は答える。
「.....く、な、....ため....」
「あぁ?何だって?」
「銀ちゃんみ"た"いに".........
強くなるためだよぉぉうわぁぁあぁあ...!!」
「俺みたいに?一億光年早い話だなそりゃ、」
幼い頃の銀時の声と重なるセリフが心に染み込む。
年月を経た今、無意味な意地も恥じらいもなしに、私達は本当の意味で再会し、抱擁した。
結局私は最初から、帰るべき場所を探していた→←〜竜胆の過去編終了しました〜
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紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時