綺麗なものはどんな時でも無条件に見とれてしまうもの ページ4
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「元の世界に帰る方法、かぁ...」
ポツリと呟いた私の独り言を、彼は聞き流さなかった。
「ん、何か問題ですかィ?」
檻の外でパイプ椅子に座る沖田くんが尋ねてきた。
「あ、いや、別に何も。」
咄嗟に答えたものの、彼と話すのはまだ少し緊張していた。
「まさか、アンタが違う世界から来た人間だったとはねー、色々現実味ねぇけど、ま、嘘ついたって意味ねーからなァ。」
私のさっきの話を思い出しているのか、しみじみと呟いた。
再び訪れた沈黙を紛らわそうと、私は話を変えた。
「あれ、そう言えば、あの、土方さんは?」
「ん?あー、あの野郎は事件現場に行くついでに旦那達を運びに行ったんでさァ。」
「え、銀さん達を?」
「ま、そこで証拠が何も見つけられなくとも、近藤さんがアンタの話知れば多少どうにかなるから、焦んなくて大丈夫ですぜィ。」
「はぁ」
なぜどうにかなると言えるのか分からないけど、彼の発言はどうにも疑えなかった。
それから、その日一日何か進展があるわけでもなく、彼との談話だけで日が暮れ、あっという間に夜になった。
沖田くんは「そんなすぐ結果出ないんでもう寝た方がいいですぜィ。」と言って緊張する私を無理やり寝かせた。
───────────────────.....
そしてついに調査審議の末、判決が下る日。
あれからも特に何ら変わりはなく、と言うより何も教えてもらえないから現状も知らないまま、一週間が経ってしまった。
結局見張りの暇潰し相手に沖田くんと話すだけで、調査審議期間を越してしまった。
長く話したおかげで彼とはお互い普通に話す仲になったが。
「おーい、起きろA。死刑判決出たから最後の晩餐何にするか決めといた方がいいぜー。」
「....」
「って、はぁ!!?!」
眠気を吹っ飛ばして飛び起きると、冗談冗談、といたずらに笑う沖田くんが朝日を背に立っていた。
「びっっっくりしたぁ──もう!!人生で一番心臓に悪い目覚め方したよ。本当に死ぬかと思った。」
まだバクバク言う胸に手を当てながら、安堵の溜息を漏らした。
「お、マジ?最高の褒め言葉じゃん。」
「褒めてるわけないでしょこの...ドS...」
珍しい彼の笑い顔が近く感じて、ふと違和感に気づいた。
「あ、あれ、何で牢の中に入ってんの?てか判決は....」
「釈放だと。ま一応仮釈放だけど。」
整った顔立ちと瞳の赤さに見とれながら、「そうなんだ」とだけ呟いた。
フィクションは細かい事を気にしないのが暗黙の了解→←愛着が湧けば湧くほど手放すのが困難になっていく
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紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時