〜ここから竜胆の過去編入ります〜 ページ24
〜竜胆side〜
天人の侵略が始まり、それに対抗する人々が立ち上がったことで始まった攘夷戦争。
逆らう人間達への戒めとして、天人らは多くの村を焼き払う事がしばしばあった。
私の村がその内の一つになってしまったある夜。
燃え盛る炎が村を飲み込み、慌てて出ていく村人達を天人らが次々と殺戮する中、
幼い私は母に連れられて泣きながら走っていた。
その夜は攘夷戦争に駆り出された父の訃報が届いた日の夜で、泣きじゃくる私の手を連れながら、母がもう片方の手で何度も頬をこするのを見た。
あともう少しで村を出られるというところまで来て、私達はついに天人に見つかってしまった。
天人から逃げている途中、私の頭上に火をまとった木板が倒れ込み、頬に大きな火傷を負った。
火傷に狼狽えていると天人に追いつかれてしまい、娘だけでも生かそうと思った母は、自分を身代わりにして私を逃がした。
「前だけ見て走りなさい、決して振り返ってはダメ。」と言いつけられた私は、その言葉の通り必死で前だけ見て走り続けた。
その時、背中越しに母の悲痛な叫び声が真っ暗な夜空に響くのを聞いた。
それから何とか命を取り留めたものの、家も両親も失った私は途方に暮れた。
行く宛てもなく、食べ物に飢え、日を増す事に不清潔になっていく体に私はもう限界を感じていた。
襲撃から幾日か経ったある日、道端の草むらに倒れて死を待つばかりの私に、通りすがりの男が声を掛けた。
「おや、こんな所に子どもが。」
草むらから私を引っ張り出すと、彼は少し眉間に皺を寄せ、口を固く結んだ。
体力も気力もない私は何も反応せずにいると、男は片手に持っていた風呂敷を膝の上に広げて、現れた握り飯を私に差し出した。
「お食べなさい。お腹が空いて辛かったでしょう。」
それを目にした私は無我夢中で握り飯に食らいついた。
本能的に喜びを感じたせいか、涙が止まらなかった。
食べ終えると、彼はまた優しい声色で話しかけてきた。
「こんな所でどうして倒れていたんですか?お父さんやお母さんは?お家はどこですか?」
「お父さんとお母さんは怖い怪物に殺されたの。お家も焼けてなくなっちゃった。」
俯きながら答える私に、
「そうでしたか。」
とだけ言うと、彼はそっと私を抱きしめてくれた。
その広い背中に手を回して、
久しぶりの温もりを感じ、心の底から安堵した。
.
もう誰も知らない思い出、私だけの思い出→←一概に全てを悪と呼べるものは、そう多くはない
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紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時