折り返しのない片道地獄船 ページ27
〜竜胆side〜
悔しさがふつふつと煮えたぎる怒りに変わると、私は二人を睨み付けて声を荒らげた。
「それが何だって言うの!!!私を今すぐあそこへ帰して!!!帰して!!!!」
「はーあ、煩いなぁ地球人の女は。特に子供。こうやかましくなるのが玉に瑕だ。君はなぜ捕まったのかを知らないでいいのか?」
相変わらずの馬鹿でかい目玉をギョロりと光らせながら、天人は訊ねてきた。
「.....何で、」
「素直でよろしい、教えてやろう。君はね、吉田松陽、いや、虚を人質にするための人質として拉致したのさ。」
気味の悪い笑みを浮かべながら得意げに話す天人の言葉に、私は首を傾げた。
「虚...って、何。」
私の言葉が予想外だったのか、ガクンと頭を垂れて見せると、天人は呆れた様子で答えた。
「君が慕う吉田松陽という男のことさ。虚という名については触れないでおこう、話しても詮無きことだ。」
「?....まあ、どう呼ぼうが勝手だけど、先生を人質にするための人質として私を誘拐したって、どういうこと。」
腑に落ちないもどかしさに耐えきれず、私は再び質問した。
「言葉の通りさ、お前の思っている虚はただの教師でしかないだろうが、奴はな、簡単に言えば底無しの強さを持つ最強の男なんだ。今は少し違うが、
まぁ人格が変わったからといって、そんな最強の男がおいそれと簡単に人質に捕まってくれるわけがないのだ。
そこで、今の虚にとっては大切な存在であるお前を人質にすることで、大人しく虚に人質になってもらうという算段だ。
分かったか?お前がここにいる理由が。」
また目を逸らしたくなるような気色悪い笑みを浮かべ、言い終えたことに満足した天人。
「何で、何で先生を人質にする必要があるの!!先生を人質にして何をするっていうの!!」
「それはねぇ、この隣の男に聞くといい。」
天人はそれだけ言うと去って行った。
「何で先生を、何のために先生を人質にするの。」
これが自分の声なのか疑わしく思うほど冷めた声で尋ねた。
しかし男は全く微動だにせず私をずっと見下ろし続ける。
よく見ると灰色のくねった髪が笠からのぞき、顔面に大きな傷跡があった。
(何、この威圧感....)
無言の男は、何かを言おうと躊躇う様子も見せず一言も交わさないまま私を置いて行ってしまった。
どっと肩の力が抜け、緊張感から解かれた私は、人質になったという危機的状況を実感するまでしばらくかかった。
慣れほど恐ろしい能力はない→←明白で歴然で、それでいて隠微な『差異』
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紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時