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心のどこかに芽生えた思いは他の思いを摘むこともある ページ2

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それから私は面会時間を考えてなるべく簡潔に手短に、

謎の男二人との会話を語り尽くした。



『霄』という組織が開発した機械で私がこの世界に飛ばされた事、



その機械の初実験で成功したのは私一人だという事、



違う世界線から召喚するには、この世界のオリジナルの私、つまり竜胆と言う女の存在が重要だという事、


そしてその竜胆が狐の虐殺鬼である事、



私と竜胆の体は二人で一つのようなものだという事、



彼らが持ちかけた交渉について、


思い出せる限りの事を。





「なるほど、それが本当なら今までの矛盾に合点がいく。」


そう言う土方さんに限らず、皆驚きつつも落ち着いているというか、腑に落ちた様子だった。


「ったく、はた迷惑もいいところだな。」


落ち着きながらも眉間にしわを寄せた銀さんは、不服そうに呟いた。


「Aめちゃめちゃ被害者アルヨ。こんな酷い話聞いた事ないネ。」


「それで、その二人の男はどんな人達だったんですか?朱色の髪の毛をお下げにして傘持ってませんでした?」


真剣な眼差しで私に訊ねる新八くん。


「そ、そう!!あと一人は大きくて、髪の毛モサモサしてて、おじさん?お下げの方はなんか、すごく顔が綺麗だったけど、怖かった。」


あの時見た容姿を思い出しながら素直な感想をこぼした。

「.....そいつ、私の兄貴ネ。」



「あー、あに、兄?兄貴ぃ!?!」


衝撃的な言葉に何度か耳を疑ったものの、彼女の目とその目に被さる朱色の髪の毛で納得した。


「そうだったんだ...」


でも、この様子じゃあまり良い関係とは言えない様な、重苦しい雰囲気を纏っていた。


それに、妹とその仲間を軟禁するなんて、どういう了見してるの...


「んなら、そろそろ浮き彫りになるんじゃねーですかィ。アンタと、狐の虐殺鬼の決定的な違いとか、今まで見過ごされた違和感とか。」

沖田くんの含みのある言葉と鋭い眼光に思わず息を飲んだ。


「A。」


「は、はい!」


銀さんには久しぶりに名前を呼ばれたような感覚がして少し緊張する。


「釈放されたら、お前の元いた世界に帰る方法、探そうな。絶対ここから出してやるから。」


優しい笑みとは裏腹に、強い意志を感じた。


でもその言葉は、




その言葉は、








何となく気が乗らないというか、




聞きたくなかった、なんて思ってしまった。




「はい。」


自分でも驚くほど分かりやすい嘘の笑顔を貼って答えた。

愛着が湧けば湧くほど手放すのが困難になっていく→←4作品目もよろしくお願いします!!



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紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時

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