異世界人と万事屋２【銀魂】

切っても切れぬ縁とは、切ったら結び直せない縁とは ページ39

〜新八side〜



間もなく後ろからぞろぞろと人影が現れ、彼が軍勢を率いる頭だという事を改めて思い知らされる。


「何でお前がここにっ！！」


屋根の上から見下ろす実兄に向かって牙を剥くように叫ぶ妹。


「それはこっちのセリフなんだけどな。まぁいい。

何があったのか知らないけど、

とにかくあの女は俺の獲物だから、



手、出さないでね。」


青年は薄っぺらい笑みを微塵も変えなかったが、

一瞬薄く開かれた両目の蒼と、最後の言葉に掛かったただならぬ圧に、思わずごくりと息を呑んだ。




「言われなくても、もうあんなヤツ知らないネ。」


僕と同じように、いや、それ以上に心に傷を負った神楽ちゃんは、憤りを感じさせる低い声で呟く、


と同時に、純粋に悲しむ少女の表情(かお)を見せた。




「....そう、そりゃ良かった！」


おや、と少し目を見開いたかと思うと、彼はすぐに貼り付けたような笑顔を浮かべ、わざとらしい明るい声色で答えた。



このわずかな間で既に、肝の冷えるような険悪な雰囲気が漂い始めていた。


しかし、そんな空気に躊躇い無く口を開く男が、遅れてやってきた。


「また逃げられちまったってのかァ？団長よォ。」

「うるさいな、邪魔が入ったんだよ阿伏兎。」


屋根の上で言い合いを始めたのを呆然と見ていると、

ふと、我に返った神楽ちゃんが叫ぶ。


「新八！！コイツらに構ってる暇ねーアル！！

銀ちゃんが危ないネ！！！」


上にある不気味な蒼とは全く別物の、曇りのない澄んだ蒼をした、必死な目が向けられる。


「うん！！行こう！！！」

即答すると、走り出した神楽ちゃんを追う形で流血で震える足に鞭を打ち、気合いで走った。





それから彼らは僕らに干渉することは無く、

ただひたすら前進する僕の頭には、もう銀さんの安否しかなくなっていった。




「神楽ちゃん、Aさんも夜兎族なの？」


彼女の軌跡を勘で追うように走る神楽ちゃんに問い掛ける。


「私も最初はそう思ったネ。でも違った、アイツから夜兎族の血の匂いはしなかったアル。

でもそれ以外の、尋常じゃない強さや、幾千もの修羅をくぐり抜けた目付きや、
拭えない数多の血の匂いは、まるで夜兎そのものだったアル。」


「つまり、夜兎ではないけど、夜兎に近い存在って事？」


要約して聞き返すと、本当はまだ信じられないと言う様な声で肯く神楽ちゃん。


「そう、それも、私が今まで出会ってきた中で、



"限りなく"夜兎に近い奴だったアル。」

人の心に自分を深く刻む方法は２つ、身を捧げるほど尽くすか、殺意を向けられるほど恨まれるか→←知りたくなかった真実というのは、裏切られた時に初めて知るもの

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