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人間は誰しもが食欲という野獣を飼っている ページ9

「ほれ、入るぞ。」

男の人の声で、ふと我に返る。

異世界に来てしまったことを実感していたせいで、少し立ち尽くしていた。



見たことも無い巨大なビルが夜の闇を貫いている。

(あのタワーなんだろ、)


ぼんやり考えながら男の人の家の玄関を跨いだ。







無造作に脱ぎ捨てられた男の人の黒いブーツを、自分のサンダルを脱ぐと同時に踵を合わせて並べておいた。









「だから今日だけ我慢しろって!!」


気付けば部屋の戸の向こう側から、さっきの男の人の声と、




「どこネ!!どこにいるネ!!私の飯を横取りしようなんざ企むアマは!!!」

まだ幼さも伺える女の子の張りあがる声が響いた。


「嘘つくなアル!!ほーらどこにもいな...」


戸を開けようとした私と、さっきからけたたましく響く声の主が勢いよく戸を開けたおかげで鉢合わせした。


その子は私よりほんの少し背が小さくて、赤毛というかオレンジやピンクに近い色の髪で、


服装は中華服で、



青い瞳を真ん丸にして見開いていた。



また随分と可愛らしい少女だった。




「信じてくれましたー?」


男の人の言葉を勢いよくスルーして、少女は私を見つめて話しかけてきた。


「飯をたかりに来たんならお断りアル。」


仏頂面で言葉を吐くと、後ろからげんこつが彼女の頭上に落とされた。



「ごめん、こいつバカだから。」

片方の手の平を立てて、謝罪のポーズをとって見せてきた。

「痛いアル銀ちゃん!!何するネ!!」

両手で頭を摩りながら少女が涙目で訴える。


「明日は飯倍にしてやっから、今日は我慢だ、いいな?」

「....分かったアル。約束アルヨ、破ったら承知しないネ。」


指先で軽く手招きされて、部屋の中に入った。




何とも見慣れない不思議な部屋だ。



長テーブルを青い長椅子で両端を挟むように置いてあり、その奥には社長席のような机と椅子がある。



そしてその上には額縁に飾られた『糖分』。


なぜ糖分なのか皆目見当もつかない。



襖や提灯なんかがあるのに、床はフローリング、何とも絶妙な和洋折衷だ。



「とりあえず、夕飯が来るまでここで座って待っててくれ。」


「は、はい。」

返事をしながら言われた通りに椅子に腰を下ろした。





「銀ちゃーん。この子やっぱりそんなにお腹空いてないってよーーー、」

なんの脈絡も無しに根も葉もない事を口にした少女に、



「どんだけ飯にがめついんだよ、嘘つくな。」


男の人がツッコミを入れた。

友達を作る上で、かしこまった自己紹介をした事なんてない→←ヒーローは遅れて来るのが相場だが、ただの遅刻とは全くの別物である



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のと丸(プロフ) - 雪華さん» わー!鋼錬の小説で、コメントして下さった方ですよね!ありがとうございます!(´∀`*)続編というか、新作ですが;; (2019年7月15日 9時) (レス) id: 3187970ecf (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - 続編おめでとうございます! (2019年7月15日 8時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
のと丸(プロフ) - みぃさん» 初めまして!コメントありがとうございます!!ご感想とても嬉しく、励みになります!。°(°´∀`°)°。銀魂の小説は初めてなので至らないところがあるかもしれませんが、今後とも楽しんで下さい(´▽`*) (2019年7月13日 16時) (レス) id: 3187970ecf (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 初めましてです!とても面白いです!この作品が大好きです。更新頑張ってください! (2019年7月13日 16時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年7月10日 22時

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