運命と赤い糸 ページ6
｢私が居酒屋クビになった理由、覚えてる？｣
｢客にビールかけたってやつか｣
｢そう。その日のうちに今月でクビだって言われて、ムカついて。休憩中に喫煙所に逃げた。｣
休憩中の喫煙禁止ルールはなかったが、それまでは我慢していた。
つまり、喫煙所を使ったのはその日だけ。
そこでは万事屋という何でも屋について会話する男性たちがいて、仕込みかと思えるほどの大絶賛。
｢クビ宣告の直後で、経済的ピンチの私。そして聞いた万事屋の評判。頭に浮かんだ言葉はなんだったと思う？｣
｢金、だろ｣
｢惜しいけど違う。正解は、｣
公務員。
公務員の兄を万事屋が見つけてくれたら、私のピンチは救われる。そう思った。
｢かぶき町を特集してたテレビ、定食屋で見たって言ったでしょ？定食屋の目の前に咲いてた桜に見とれてたら、順番待ちに勘違いされて入っただけなの。｣
｢今日の桜見て、色々思い出したか｣
｢今思えば、数え切れないほど偶然が重なってた。｣
あのとき桜に足を止めなかったら。
あのとき順番待ちの勘違いをされなかったら。
あのときテレビが別のチャンネルだったら。
あのときセクハラを我慢し続けていたら。
あのとき喫煙所に行かなかったら。
私が妾の子じゃなければ、かぶき町にさえ惹かれなかった。
十四郎が公務員と知らなければ、探して当てにしようなんて思わなかった。
｢運命も赤い糸も信じないタイプだったんだけど。もしかしたら、あるのかもね。｣
｢だとすりゃとんでもねェ運命だな。そんだけ傷付いて迷ったってのに、追加でバズーカで家失くすわ、囮役で危険な目にあうわ、交通事故で入院するわ。あげく、赤い糸の先が俺とはね。｣
｢人が今までの人生を良い感じに受け入れてんのに、ぶち壊すのやめてくれる？｣
運命はまだしも、赤い糸なんてかなり恥ずかしい発言したぞ私。
雰囲気に流されて普段なら言わない発言したぞ。
｢･･･空気読めよバカ｣
たとえ嘘でも｢そうだな｣とか肯定してくれたって良いものを。
今こそ恥ずかしさから現実逃避をしたくて、タバコを咥える。
｢おいおい。夜桜に酔った直後にそりゃねェって。｣
｢良いでしょ別に。｣
取り出したライター。
だけどそれは簡単に奪われてしまう。
｢ちょっ･･･！｣
タバコが離れると同時、唇に別のものが触れた。
｢口寂しいならこっちで良いだろ。｣
｢･･･良い訳ないでしょ｣
嫌になる。
恥ずかしさから逃げるどころか、増すばかりだなんて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ξεグリムэЭ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» ありがとうございます！ログイン情報を忘れて長らく更新できなかったアホなのですが(笑)引き続き頑張ります！ (2020年9月2日 2時) (
レス) id: 69bdc7b84c (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - しっかり掴まれていて、リアル銀魂！って感じが凄いなと思いました笑ええぇ…未だに驚かされています笑銀さんの生き様だとか、そういうものも盛り込まれていて一気に引き込まれました。この作品大好きです！！応援しています！！ (2020年6月18日 16時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - 昨日の夜この作品を見つけ、次の日が学校という事も構わず一気読みしてしまいました笑めっっちゃ面白い！！こんな事があったら、きっとキャラはこういう事を言うんだろうな、するんだろうなという部分を→ (2020年6月18日 15時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ξεグリムэЗ | 作成日時：2019年3月22日 6時
