溶け込んだ闇 ページ5
──1年前──
「兄、か・・・」
母が亡くなってすぐ、思いがけず知ることとなった腹違いの兄の存在。
これからどうすれば良いのかとどん底にいた私にとって、それは唯一の光だった。
だが、希望と呼ぶにはあまりにも不正確。
【A。困ったら彼を頼りなさい。あなたの腹違いの兄にあたる人だから。】
頼れ、って言われてもこれだけじゃ・・・。
父が持っていたのだろう少し色褪せた写真には、小さな男の子が1人。
一体何年前の写真かさえ定かではない。
改めて母からの手紙を見ても『土方家より江戸で公務員との情報』という軽いメモ書き以外、特に個人を特定できるような手掛かりもゼロだ。
江戸。
未だ踏み入ったことのないその地だが、今この国の中枢である事実からして恐らく。
「・・・人口も多い。」
そんな中からたった1人。この情報量だけで探し当てるなんて無謀としか思えないし、このままここで働き口でも探した方が得策なのは間違いない。
でも。
「嫌よ、妾の子なんて」
今までも何度か働くことを試みて、私の出自が分かっては疎まれ。そんなことの繰り返し。
誰も私を知らない場所で生きていく。
そんな将来をなんとなく描いてみても、江戸に行く理由としては不十分でもあった。
「江戸じゃなくても良いんだし・・・」
──現在──
「・・・そこから何がどうなって江戸に来たんだよ。今の話じゃ、江戸に来る選択肢はほぼ無かったじゃねェか。」
「たまたま入った定食屋でテレビを見たの。かぶき町が映ってて、第一印象は最悪だった。」
まるで無法地帯。
お世辞にも治安が良いとは思えなかったし、その日やっていたのだって「実録!かぶき町に蔓延する闇」なんてタイトルの特集。
「だけど、出自でどうこう言われるのにうんざりしてたから。多かれ少なかれ誰もが闇を抱えた町になら、溶け込める気になっちゃってさ。」
兄の存在を知ってからずっと迷っていた江戸への一歩。
迷いを打ち消したのは、たった数十分のテレビの特集だった。
「それで江戸の中でも、わざわざかぶき町なんて物騒な場所を選んだってワケか」
「運良くすぐにアパートも貸りられたし、居酒屋で半年以上バイトもしたけど、十四郎を探すつもりは無かった。実際江戸に来て、人の多さにほとんど諦めてた。」
転機は、あのビール1杯──。
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ξεグリムэЭ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» ありがとうございます!ログイン情報を忘れて長らく更新できなかったアホなのですが(笑)引き続き頑張ります! (2020年9月2日 2時) (レス) id: 69bdc7b84c (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - しっかり掴まれていて、リアル銀魂!って感じが凄いなと思いました笑ええぇ…未だに驚かされています笑銀さんの生き様だとか、そういうものも盛り込まれていて一気に引き込まれました。この作品大好きです!!応援しています!! (2020年6月18日 16時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - 昨日の夜この作品を見つけ、次の日が学校という事も構わず一気読みしてしまいました笑めっっちゃ面白い!!こんな事があったら、きっとキャラはこういう事を言うんだろうな、するんだろうなという部分を→ (2020年6月18日 15時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ξεグリムэЗ | 作成日時:2019年3月22日 6時