物忘れ ページ30
「・・・全然分からねェ」
話し渋っていた全てを伝えてから、銀時が最初に口にしたのはそんな言葉だった。
「分からないって?何が?これでもう何も隠してないよ。全部だよ。」
「そうじゃねェよ。事の顛末は大体分かった。」
「・・・だったら何が分からないの?」
「言ってただろ。俺の気持ちが変わっちまうかも、って。」
そう、その通り。
銀時に面と向かって「私にも護らせて」なんてことを言ったりしておきながら、たかがマンションのエントランスから部屋に辿り着くまでの時間に拐われるだなんて。
お笑いにも程がある。
バカな奴だと呆れられて、やはり私と恋人になったのは間違いだったと思われてしまうのは嫌だ。
「ほんっと分からねェ」
想像していた通り、彼から吐き出されるのは呆れのため息。
・・・やっぱり嫌になったかな。
そんなことを思ってこみ上げそうになる涙を飲み込んでいれば。
「・・・ぅえ!?」
思わず変な声をあげてしまった。
次にどんな言葉が降ってくるのかと冷えていく思考に囚われていたのに、私の頭に触れたのはそれはそれは優しい手付きだった。
「分かんねェよ、なんで俺が心変わりするなんて心配してんのか。どうせまた迷惑かけたとか思って難しいこと考えてんのかもしれねェけど、そう簡単には手離してやらねェよ?」
「・・・何それ」
「お前に戦闘能力なんて携わってねェことも、あの真選組副長の妹だってことも、全部分かったうえで決めたことだ。どうやら物忘れが酷いらしいAにもう1度だけ伝えといてやるよ。」
そう言うと、ゆっくりと私の耳元に口を寄せて──。
「お前が好きだ。どんなことだろうと丸ごと受け止める覚悟ぐらいある。」
そのまま耳たぶに柔く口付けられて、さすがに私も少し肩を揺らした。
「それ、十四郎に挨拶行った日の・・・」
「覚えてるじゃねェか。あの日はお前が俺に記憶力ゼロだなんてことも言ってやがったが、どうやらそりゃお前の方だったみてェだな。」
口調こそいつものからかい調子のくせに、その目は先ほど頭に触れた手付き以上に優しい。
「俺はもうお前の料理なしじゃいられねェの」
「・・・料理かよ」
拳をつくって小さく肩を殴ってやれば、その腕をそのまま掴まれる。
拘束されていた痕が残る私の手首を決して痛めないよう加減されたそれに、胸が苦しくなった。
なんだか今は銀時から向けられる全てが優しくて、たまらなくこの人といたいと思う。
「・・・好き。」
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ξεグリムэЭ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» ありがとうございます!ログイン情報を忘れて長らく更新できなかったアホなのですが(笑)引き続き頑張ります! (2020年9月2日 2時) (レス) id: 69bdc7b84c (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - しっかり掴まれていて、リアル銀魂!って感じが凄いなと思いました笑ええぇ…未だに驚かされています笑銀さんの生き様だとか、そういうものも盛り込まれていて一気に引き込まれました。この作品大好きです!!応援しています!! (2020年6月18日 16時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - 昨日の夜この作品を見つけ、次の日が学校という事も構わず一気読みしてしまいました笑めっっちゃ面白い!!こんな事があったら、きっとキャラはこういう事を言うんだろうな、するんだろうなという部分を→ (2020年6月18日 15時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ξεグリムэЗ | 作成日時:2019年3月22日 6時