わざと ページ29
「何がどうして吉原にいたんだよ」
「さっきの女の人、誰」
「それより俺の話」
「さっきの人、元カノ?」
「だからこっちの話だって」
「綺麗な人だったよね」
「お前なぁ・・・」
万事屋に戻って早々始まった、取り調べのような時間。
それでもどうしたって話す気にはなれなくて、私は私で気になっていたことを聞く。
なんだかその平行線な会話が吉原での銀時と女性のやり取りを思い出させて、心の奥でモヤモヤとした感覚が渦巻いた。
「・・・これじゃあ埒が明かねェ。先にお前の質問に答えてやるから、次はお前の番。それで良いな?」
銀時が折れる形となった問答に、私は小さく頷くしかなくなる。
「それで、さっきの人は?」
「月詠」
簡潔にそう伝えられた名前に、聞き覚えがあった。
確か、私を吉原へと連れて行ったあの人が言っていたんじゃなかったか。地上の法が通じない代わりに吉原を護る人々がいるのだと。そのトップが月詠という名だと。
そりゃあ吉原を暗闇から救い出したらしい銀時と吉原の守護役に面識があるはずだ。
「あの人さ、」
「ちなみに元カノじゃねェ」
遮るように言われたそれに少し引っ掛かった。
今、わざと遮った。
私は「あの人は銀時のことを好きなんじゃないのか」と聞こうとした。
なんとなく、銀時もあの人からの好意に気付いているだろうと感じたから。
「・・・そっか」
真意なんて分からない。分かりたくもない。
そうして私は納得の反応だけを返す。
・・・ねぇ、銀時。私の問いかけを遮ったその意味が彼女に向けられたものだと、私には理解できちゃったんだよ。
「じゃあ次はお前。約束したもんなァ?」
「圧が凄い」
「わざとだよ」
「そんなに大した話じゃないよ?」
「それでも話せ」
「話したら、変わっちゃうかもしれない」
「変わる?何が?」
「銀時の気持ちが」
「・・・よく分かんねェけど、んなことは聞いてから決める。さっさと話せ。」
「・・・・・・うん」
あまりにも長いこと話せと迫られていたせいか、もはや私自身が何故ここまで頑なに話したくないのか分からなくなってきていたり。
それでもやはり、「話したくない」というその気持ちだけは変わらないのだ。
銀時の目を見て話し出した自分の指が微かに震えているのを感じる。
・・・あぁ、どうか。
この人の心が私から離れてしまいませんように──。
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ξεグリムэЭ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» ありがとうございます!ログイン情報を忘れて長らく更新できなかったアホなのですが(笑)引き続き頑張ります! (2020年9月2日 2時) (レス) id: 69bdc7b84c (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - しっかり掴まれていて、リアル銀魂!って感じが凄いなと思いました笑ええぇ…未だに驚かされています笑銀さんの生き様だとか、そういうものも盛り込まれていて一気に引き込まれました。この作品大好きです!!応援しています!! (2020年6月18日 16時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - 昨日の夜この作品を見つけ、次の日が学校という事も構わず一気読みしてしまいました笑めっっちゃ面白い!!こんな事があったら、きっとキャラはこういう事を言うんだろうな、するんだろうなという部分を→ (2020年6月18日 15時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ξεグリムэЗ | 作成日時:2019年3月22日 6時