優良物件 ページ13
翌朝、私は久しぶりに万事屋の台所に立っていた。
布団にくるまった瞬間から「いっそ開き直って爆睡してやる」なんて意気込んでみたものの、そう簡単にはいかない。
私が眠気という概念そのものに嫌われたのかと思うくらい、待てど暮らせどそのときは訪れず。
結果、眠れないまま現在に至る。
慣れた手つきで冷蔵庫を覗いたり調理器具を用意したりしながら・・・ふと気付く。
家主の許可なく宿泊なんて気が引ける、と言ったのは誰だったか。少なくとも、他人の家で当たり前に冷蔵庫を開けて料理を始める女が言うことではないような。
「言動が矛盾してる・・・」
自覚した途端、急におかしくなって吹き出した。
「・・・・・・朝から怖ェんだけど」
「・・・・・・いつから居たの」
「お前が冷蔵庫開けたあたり」
「・・・ほぼ最初じゃん」
さては私が布団を出たときから起きていたのだろうか。
完全に狂人を見る目で私から距離を取る銀時に、少しだけ文句を言ってやりたい気分だ。
私がソファーで寝ることを了承してくれていれば、今頃はまだ眠っていたかもしれないのに。
「で、何してんの?朝食作りですか?」
「そうですけど。そう言う
「特に意味はねェんだけど。・・・つーか誰がナマケモノ?」
「事実じゃん。」
隣から不満げなオーラを感じながら、お皿に卵を割り入れる。
砂糖を計量し始めたところで、妙にくすぐったい気分に襲われた。
「・・・ねぇ、そんなに見ないでよ」
「良いだろ別に」
「落ち着かない」
今まで銀時と台所に立つときは必ずどちらも手を動かしていたから、何もせずただ見られているのはこれが初めて。
「砂糖多めで頼むわ」
「玉子焼きにまで甘党発揮すんなアホ」
銀時の言葉を無視して砂糖の計量を終えた、のだが・・・彼からは何故かとても優しげな目を向けられていて、心臓が跳ねた。
慈しむような──そう、例えるならそんな感じ。
「・・・新婚みてェだな」
「し・・・っ!?」
突然すぎる発言に、驚きさえ声にならない。
「・・・・・・私と結婚したいなら年収及びその他の審査は厳しいからね」
「どうせ俺以外貰い手ねェだろ?そうやって身の丈に合わない男を求める奴が婚期逃すんだよ。」
「逃した方がマシ」
「はァ?優良物件だろーが!」
「自分で言う!?」
優良物件、か。
・・・間違ってない。
家賃が高すぎて、決めるまでに散々迷ったんだから。
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ξεグリムэЭ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» ありがとうございます!ログイン情報を忘れて長らく更新できなかったアホなのですが(笑)引き続き頑張ります! (2020年9月2日 2時) (レス) id: 69bdc7b84c (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - しっかり掴まれていて、リアル銀魂!って感じが凄いなと思いました笑ええぇ…未だに驚かされています笑銀さんの生き様だとか、そういうものも盛り込まれていて一気に引き込まれました。この作品大好きです!!応援しています!! (2020年6月18日 16時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - 昨日の夜この作品を見つけ、次の日が学校という事も構わず一気読みしてしまいました笑めっっちゃ面白い!!こんな事があったら、きっとキャラはこういう事を言うんだろうな、するんだろうなという部分を→ (2020年6月18日 15時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ξεグリムэЗ | 作成日時:2019年3月22日 6時