第六十八幕 ページ22
「そんな匂いはしないぞ。
そもそもこの季節に咲く花ではないだろう。」
梅の花は二月から三月をかけて開花する。
Aは彼の言葉に納得し、気のせいだと思うことにした。
「ソラ、知ってる？
ここの別名は�倏潦擶爿瓩箸盡討个譴討い襪鵑世茵�」
今となっては緑に包まれた、木の幹に触れる。
この先の猛暑を越えて、寒い季節を耐え忍び、彼らは春を迎える前に咲きほこるのだ。
「早く会いたいものだね。
あの人は毎年この梅の花を見ているのかな？
…クス、なんかシュールだけど似合うかも。」
脈絡のない話にソラが眉に皺を寄せる。
彼女はそれに応えるように振り返ると、薄笑いを浮かべた。
「ソラ、ここの主に挨拶をしに行くよ。」
・・・
彼女はここが奴良組の傘下である牛鬼組が委任されていることを知っていた。
それはつい最近のことで、烏天狗が持ち出した『奴良組百鬼夜行画図』を思い浮かべる。
その時に、咄嗟に見たものが牛鬼が構成する組であり、奴良組のシマの中では最西端であることを理解したのだ。
ソラは限界が訪れ腰を下ろし始めた彼女を背負い、その話を聞きながら坂道を登る。
時間はあっという間に過ぎて空が橙色に染まるころ、木陰から燃え盛る炎のような夕日の光が不気味に揺らめいていた。
「相変わらず、妖怪のことになるとお前は恐ろしく頭が回る。
全ての団体を覚えたというのか？」
「まさか。買い被り過ぎだよ。
まあ私も記憶力が良い方だとは思ってるけどね？」
嫌なことも、楽しいこともはっきりと覚えている。
何かを思い浮かべる彼女を一瞥して、ソラは話題を変えた。
「しかし、奴良組のお目付役も間抜けだな。
部外者にも簡単に地図を見せてくるとは、随分と信用されたものだな？」
「意地悪な言い方しないでよ。
それに烏天狗は、羽目の外し方は激しいけど、ああ見えても心配性なところもあるからね。
常に考えてから行動してる。…どうして、私にも大事な書物を見せてくれたのかは謎だけど。」
恐らく難しい顔をして考えているであろう彼女の丸まった背中をチラリと見た。
ソラは途方もない山道を登り続けていると、ふと背中にある存在感に意識を向ける。
「…少し重くなったんだな。」
「ちょっと。今の言葉は聞き捨てならないよ。
レディに対してなんてことを言うのさ！」
と、彼女がぷんすかと怒りだすとソラは鼻で笑った。
「馬鹿がいくら考えても無駄だ。
お前は今日の飯や若菜とやらの料理のことを考えて、幸せ太りでもしてろ。」
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桃子(プロフ) - めっちゃ面白くて好きです!!忙しいと思いますが更新頑張ってください！ (2021年5月15日 22時) (
レス) id: f758fcdb57 (このIDを非表示/違反報告)
氷麗 - とっても面白いです！色々忙がしいと思いますが、更新頑張って下さい！p(^-^)q (2020年8月6日 10時) (レス) id: 0b4aa008b9 (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー(プロフ) - みいらさん» コメントありがとうございます！とても励みになります( ；∀；)ノロマ更新ですが気長にお待ちいただければ幸いです。今日の夜に更新しますね！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: a8c312a3ba (このIDを非表示/違反報告)
みいら(プロフ) - とっっても面白いです！更新頑張って下さい！！ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レモンティー | 作成日時：2020年5月28日 19時
