第六十七幕 妖怪ミステリーツアーに行く ページ21
「うげぇ…疲れた〜。」
Aはパンパンに疲労が溜まった足で、やっと目的地に着いた。
彼女は今、捩目山の麓にいる。
「だらしがないな。
まだ別荘とやらは遠いのだろう？」
横には相棒のソラもいた。
何故彼が堂々と姿を現しているのか。
他の団員は近くにいないのか。
それもこれも、ソラの条件に従った結果だった。
清十字団はあと一時間後に到着する予定だ。
「たく、奴良組のみんなを見習ってよ。
妖怪だって今時携帯を使うんだよ？
便利なご時世なんだから、ソラも新幹線くらい乗ろうよお…。」
「
妖怪のくせに人間の交通機関を利用するのは名が廃るというもの。
妖怪ならば自らの足で…」
(出たよ…ソラの偏屈な主義)
彼は独立自尊の精神と里の信条でできている。
妖怪たるものの、こうあるべき姿だと自分の価値観を相手に押し付けて決して曲げることはない。
良く言えば、自分の信念が強くて芯がある。
悪く言えば、考え方が古いうえ、新しいものに目を向けない頑固ジジイだ。
その傲慢さにはAも聞く気を失せていた。
実を言うと、浮世絵町から滋賀県まで徒歩で移動している。
_____二日間をかけて。
何故、人間である彼女が交通機関を利用しなかったのか。
というよりは利用できないと言う方が正しい。
それはソラの条件の一つに�狆錣房�分の視界に入るところにいること�瓩飽�んでいたのだ。
つまり、金魚の糞如く側を離れるなという意味だ。
他にも数十個の条件があるが、今回は略すことにする。
人間の文化を嫌うソラは、いつも走って移動する。
そのため必然的に彼女もソラに合わせなければならない。
何とか休息を挟んだり、ソラの背中に跨って移動することで二日で済んだものの、Aの疲労感は取れずじまいだ。
屋敷のふかふか枕や若菜の食事が恋しくなるほど、彼女は何十年も彷徨う旅人のような気分になっていた。
ソラは怪我をしているAの身体にアメを与えるどころかムチをバンバンに叩きつける。
「…チッ、この石頭が。」
山のように積み重なった身体的疲労と精神的ストレスが相まって、悪態をついてしまう。
当然、聴覚の優れたソラはその言葉を耳で拾う。
「テメェ…今から連れて帰ってもいいんだぞ…？」
彼のスイッチが入る前にAはスタスタと前進する。
目の前は頂上につながる階段がある。
辺りには広い大地と草木が茂っている。
その中で、微かに香るものが鼻の奥を刺激した。
「……ん、梅の香り？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桃子(プロフ) - めっちゃ面白くて好きです!!忙しいと思いますが更新頑張ってください！ (2021年5月15日 22時) (
レス) id: f758fcdb57 (このIDを非表示/違反報告)
氷麗 - とっても面白いです！色々忙がしいと思いますが、更新頑張って下さい！p(^-^)q (2020年8月6日 10時) (レス) id: 0b4aa008b9 (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー(プロフ) - みいらさん» コメントありがとうございます！とても励みになります( ；∀；)ノロマ更新ですが気長にお待ちいただければ幸いです。今日の夜に更新しますね！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: a8c312a3ba (このIDを非表示/違反報告)
みいら(プロフ) - とっっても面白いです！更新頑張って下さい！！ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レモンティー | 作成日時：2020年5月28日 19時
