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第十幕 ページ12

「わあああん!!
ソラどうしよう!!
さらに関係拗らせちゃってどうすんのよ私ぃ!!」

「ええい喧しい!!
二日連続迎えに行ってやった上、儂の毛並みを汚しやがって。
帰ってからもぐずぐずと鬱陶しい!」

結局、ソラに迎えに来てもらい今は自宅にいた。

ソラはテレビの報道をのんびりと聞いていたいが、自分の身体に顔を埋めるこの子供が気になり集中できなかった。

不意にAが匂いを嗅ぎ出すと、ソラにトドメの一撃を加える。


「…獣臭い」

「喰ってやろうかこのクソ餓鬼!!!」

この二人のやり取りはこれが日常茶飯事である。
一応主と従者の関係ではあるが、その間柄はくだけている。
まるで友達のような、家族のような感覚だ。

故に、妖怪に対して態度がラフすぎるAの発言は奴良組に限らず、身内を怒らせることが多い。

怒りの咆哮をあげるソラとは対照的にAはテーブルに頬杖を立て、考え事をする。

(リクオに嫌われたかな…)

もっとリクオの意見を聞けばよかった。
確かに本人の気持ちを無視して自分の思いをゴリ押ししてしまったと、今になって反省する。

ショック状態をなんとかしてくて、気晴らしにテレビを見た。
すると、彼女の重い瞼を覚醒させるような内容が報道されていた。


《浮世絵町にあるトンネル付近で起きた崩落事故で路線バスが生き埋めに…》

《中には浮世絵小の児童が多数乗っていたとみられ…》

何かの間違いであって欲しかった。
カナの乗っているバスが生き埋めになっているという真実を聞き、冷や汗が一つ垂れる。

「ソラ」

「何だ!!」

今も尚、怒り続けるソラであったが彼女の唯ならぬ雰囲気を察し大人しくなる。

「今すぐここに連れてってほしいの。
友達が危ない…」


・・・


同時刻、リクオも帰宅し崩落事故の中継を見ていた。

そのバスには、数分前に別れた幼なじみのカナが乗っている。

立ち止まっている場合ではなかった。
リクオは羽織を着て、側近や屋敷のみんなについてくるよう命じた。
しかし、奴良組幹部の一人である木魚逹磨がそれを牽制する。

「そのような考え方で我々妖怪を従えることができるとお思いか!?
我々は妖怪の総本山…奴良組なのだ!
人の気まぐれで百鬼を率いらせてたまるか!!」

若頭に対する無礼な行動に青田坊はキレた。
幹部と特攻隊長の喧嘩に本家の妖怪は手も足も出なくなる。


「やめねぇか!!」


しかし、リクオの鶴の一声によりその場が収まった。

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

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