そっくりさんいらっしゃい

第三十三話:人の道楽にケチを付けるなと言うけど時と場合による ページ40

銀時「...あれ？そういえば神楽は？」


強打した顔を擦っている銀時は神楽の声が聞こえない事に首を傾げる。


脱獄犯「その娘なら寝てるぞ」


銀時「へ？」


男に捕まっているAの膝に頭を置いてスヤスヤと寝息を立てている神楽の姿は銀時からは見えない。


銀時「こんな状況で寝てんの？え？ちょっと何言ってるか分かんないです」


A「おい、コンビニ寄れって言っただろ」


銀時「お前ねェ...今それどころじゃなっ...」


A「あ...お前がモタモタしてるから通り過ぎただろ」


銀時「多分もう一軒あるって、多分」


脱獄犯「おめェ等...そんなのいいからそこ右曲がれ」


銀時「...おじさーん、こんな事してホント逃げ切れると思ってんの？今時脱獄完遂するなんざ、宝くじの一等当てるより難しいって」


脱獄犯「逃げ切るつもりなんてねェ...今日一日だ。今日一日自由になれればそれでいい。特別な日なんだ...今日は...」


A「(訳アリか...」


窓の外を見て物憂げに語る男を銀時もAも黙って見つめた。


脱獄犯「今日は...」


ーーーーー
(どこかのライブ会場)


派手な服装の女子「みなさーん！今日はお通のライブに来てくれてありがとうとうきびウンコ！」


脱獄犯「とうきびウンコォォォ！！」


A「(うるせェ)...なんだ、ここ...？」


銀時「AちゃんAちゃん、珍しく動揺のあまりどもるってるぞ」


A「なァ...あの馬鹿共は何なんだよ」


銀時「俺に聞かれてもその馬鹿としか答えようがないわ」


A「(そうか...)チッ...使えねェ」


銀時「あれ？俺の耳がおかしいのか？心の声がダダ漏れなんだけど」


A「(おかしくねェよ)腐れ天パ」


銀時「最早ただの悪口！？」


脱獄犯「L・O・V・E・お・つ・う！！L・O・V...グフッ！！」


A「うるせェ」


隣で寺門通というアイドルにラブコールを送っている喧しい脱獄犯の頭に踵落としを食らわしたAは出口へと足を進めた。


銀時「おーい！Aちゃん！？この状況で帰るの！？」


後ろで騒ぐ銀時の声をガン無視し出口へと歩いていくAは視界の端を掠めた見飽きた人間を掛けた眼鏡もスルーした。


新八「スルーしたじゃねぇよ！？もっと絡めよォォォ！！」


A「さァて...久し振りに呑みにでも行くかァ」


のらりくらりと歩く後ろ姿を一つの影が追ってることに果たしてAは気付いているのか。


？「見つけたぞ...高杉晋助」


影がニヤリと笑った。

作者から→←第三十二話:善人も悪人も空気を読め

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す