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「私は、失敗作なんです」
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気付いたときには、もうひとりぼっちだった。
周りに同じくらいの歳の子も、若者もいた。
外の話をしてくれる人もいた。
それでもみんな、次々に消えていってしまった。
大人は言った。
「お前は選ばれし人だ」と。
私は悟った。
きっとみんなは、死んでしまったのだと。
私達は定期的に薬品を投与されていた。
その事に私が疑問を抱くことはなくて。
ただそれが当然かのように、受け入れていた。
薬品の投与は胸が苦しくなって、熱が出るから嫌いだった。ご飯も食べられないほど辛かった。
だから皆、乗り越えられなかった。
苦しみながら、静かに消えていってしまった。
私ただ一人がその苦しみを乗り越えるたび、大人は喜んだ。
" 適合者だ "と。
それが何年続いたかは覚えていない。
けれどある日、私の生活は一変した。
「っぅあ……」
普段とは違う部屋に連れてこられ、私は背後から突然刀で斬りつけられた。燃えるように痛くて、涙が出た。
初めて感じた血が流れる感覚を、今でもはっきりと思い出せる。
「……どうだ?」
「…まだ、何とも。」
「…ま、初回だからな」
なんでもないような顔をして私を見る目は、酷く冷たい。
あまりの痛みと恐ろしさに、吐き気が止まらなかった。
「おい、お前は選ばれし人なんだ。そんな情けない顔をするなよ、喜べ。まだまだこれからだ」
あぁ、これは何だと、私は初めて自分の存在に、この生活に、違和感を感じた。
声にならない声を上げながら、絶望したのを覚えている。
一体私は、何なんだと。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時