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「Aさん、初めまして、志村新八です」
「…初めまして、Aです」
「お話は聞きました。体の調子はどうですか?」
「新八ィ、それはセクハラアル」
「どこがセクハラだよ!体調聞いただけだろうが!」
「神楽、しょうがねぇよ。新八今思春期だから。そーいうお年頃だから」
「きもいアル」
「なんでそんな悪口言われなきゃなんないの!?意味分かんないんですけど!」
彼らが、眩しかった。
私もこんな風に生きられたらと、また、ぼんやりそんなことを考えた。
「A」
不意に呼ばれた私の名前。
はっとしてそちらに目を向けると、赤い瞳が私を真っ直ぐに捉えていた。
「人間ってのは独りで生きていけるほど強かねェ。…全部独りで抱え込めば、いつか自分も知らねェ間に壊れちまうもんだ」
頭をガシガシと掻いて、続ける。
「…要は皆弱えーんだよ。だからなんつーか、…俺らにその一人で抱えてる荷物、預けてみんのもアリじゃねーの?…ほら、俺ら一応万事屋だし」
「そうヨ、ついでに酢昆布も預けるヨロシ」
「いや意味わかんねーよ、酢昆布預けたらもう帰ってこないだろそれ」
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「…でも、僕らで良ければいつでも頼ってください」
新八、と名乗った彼は、暖かく笑う。
不思議なほどに柔らかな空気。
その優しさが痛くて、心地よくて。
「私の話、聴いてもらっても、いいですか……?」
「おうよ、んなの朝飯前だ」
愚かな私は、また同じ過ちを侵すのだった。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時