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「ただいまヨー」
「…、」
「A、さっさと入るネ。風邪引くアル」
「うん、」
「銀ちゃーん、私お風呂入るヨー」
「おー」
ちゃんと話さなきゃな、と思う反面、やっぱり気まずくて、一歩一歩がすごく重い。
チラ、と覗いた部屋に見える銀髪は、いつも通りジャンプを片手に寝転がっていた。
ゆっくり近づくと、彼がぴくりと動きを止めたのが分かる。
「……銀さん、」
「あー？」
「……ごめんなさい、」
声が震える。
彼はジャンプから目を逸らさずに、ため息を一つ。
やっぱり嫌われてしまったのかと、ぎゅっと自分の手を握りしめた。
＿＿＿刹那、彼がひょこっと突然飛び起きると。
「ぃたっ、」
私の額に強いデコピンを一発。
「ほらみろ、痛ェんじゃねーか」
「……、？」
「いてーんだろ。すぐ治るっつっても、怪我すりゃ痛え。失敗作でもバケモンでもねェ、お前は俺らと何も変わんねーんだ」
「……」
「だから無茶すんじゃねー、わーったか」
呆れたように私を見る瞳は、どこか優しい。
「返事は？」
「…はい……、」
「……ん、」
「わっ、」
私の手をぐい、と引くと、気付けば私は銀さんの腕の中。
彼の鼓動が聞こえてきて、その温もりは心地良い。
「ぎ、銀さん…？」
「……無事で良かった」
聞いたこともないような弱々しい声。
私がどんなに彼を心配させてしまったのかと、私の胸は罪悪感で埋まる。
「……A、もうお前は独りじゃねェし、独りにもさせねェ。……頼むから、もうあんな真似すんな」
そういった彼の声があまりにも寂しそうで、私はただ、何度も頷くことしかできなかった。
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作者名：日向 | 作成日時：2020年10月10日 23時
