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「……な、」
「んじゃ、3回まわってお手からワンだな」
「それ何かどっかで聞いたことあるんですけど!!!??」
「ぱっつぁん、ドSなんてどこの世界もみんな一緒ネ」
「いやこの世界のドSと少女漫画のドS一緒にしちゃいけないでしょ…」
ほら、と催促する沖田くんの視線の先にいるのは、困惑した様子のA。
全く妙なのに気に入られちまったもんだ。
どっか抜けてていじり甲斐のあるアイツは、まさにドSの格好の餌食。
面倒なことになったと頭を抱えると、視界の端に見えた丁度良いもの。
「…沖田くん、それやったら猫渡してくれんの?」
「…もちろん、猫に興味は無いんで」
「よし、分かった」
「銀ちゃん!Aになんてことやらせるつもりアルか!?」
「……誰がAにそんなことさせるっつったよ」
もちろんAにそんな変な事やらせる訳にゃいかねェ。
「よし、定春、頼んだぞ」
「ワン!」
「……げ、」
本物の犬がいるんだから、これほどまでの適役はいねェ。
Aも納得したようで、定春頑張って、と背中を撫でた。
「うし、定春、3回まわってお手からワンだってよ」
「ワン!」
これにて一件落着、と安堵したその瞬間。
ガブリ、と定春は沖田くんの顔に噛み付いた。
気のせいかも知んないけど、ツーっと血が滴っているのが見えているような気がする。
俺たちの間には、ただただ沈黙が続いていた。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時