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「私、Aちゃんが来てくれたのが嬉しくて、はりきって作りすぎちゃったみたいなの…。おかわりはいくらでもあるから、遠慮なく食べてくださいね」
……地獄。
どんな地獄だ、これは。
「あ、はは……ちょっと俺今日、腹減ってねーなー…なんて」
「…僕も朝からお腹の調子が…」
「アネゴ…これ」
「卵焼きよ?」
机にずらりと並ぶ、黒い物体。
まじでダークマターじゃん。
こんなん大量に食ったら、間違いなく…。
「いただきます」
ぱく、と迷いもなく口に運んだのは、A。
え、なに、どういうこと。
俺ら3人はみんな目を点にして彼女を見つめた。
「…ちょっと苦いですけど、美味しいです」
ぽかんと口を開けた俺らを他所に、大人の味ですね、なんて平然と笑っていやがる。
次々と箸を口に運ぶAは、正気の沙汰じゃない。
もう怖い。怖いんですけど。
味覚音痴?味とか分かんないタイプなの??
「あら、嬉しいわぁ。たくさん食べてね」
「はい!ありがとうございます!」
「オイィィィィィ!!ありがとうございますじゃねェよ!!こんなんたくさん食ったら死ぬぞ!出せ!早く出せ!まだ間に合う!!」
「そうですよAさん!!無理しなくていいんですよ!!」
「Aー!お腹下るネー!」
「わっ、ちょっ、」
「帰ってこい!帰ってこーい!!」
夢中で肩を揺すっていると、いつの間にやらAは目を回していた。
はっとして振り向けば、そこには手に黒い物体を持ち、目を赤く光らせた姿が。
「何晒とんじゃあああー!黙って食わんかぁぁぁぁー!」
「「ぶべらっ!!」」
そこからの意識は、ぱったりと途絶えた。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時