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「……ーい、銀ちゃーん!」
「あぁ?…るせーな、」
「おいクソ天パ、早く起きろヨ」
……別嬪さん、困ってるアル。
その言葉に固まること数秒。
「やべっ、寝てた…!」
「やっと起きたネ」
呆れた顔をした神楽と、不安そうに瞳を揺らす女。
どこか焦ったような表情に、眠気は一瞬で吹き飛んだ。
「お前、身体平気なのか?」
「銀ちゃんまさか昨日の夜女連れ込んで…」
「ちげーよ!馬鹿!誤解を生むようなこと言うんじゃねェ!」
「どーだか、男なんて皆そんなんアル」
「うるせェなマセガキ!」
あの、と小さく呟いた彼女の声は、透き通るように綺麗だった。
「すみません、私、もう行きます」
「……え?」
「助かりました。これはお礼です」
「…な、」
半ば押し付けるように渡されたのは、随分分厚い封筒。
え、これ全部、金?
大金を目の前に喜ぶ間もなく足早に去ろうとする彼女の腕を、無意識に掴んだ。
「ちょっ、待てよ、」
「キムタカかよ」
「んなこと言ってる場合か!」
「…っ、ダメです」
「……お前、」
しょうもないやりとりしかしてないってのに、女の瞳には涙が浮かんでいる。
明らかに動揺していて、何かを恐れているようだった。
「おい、どうした?」
「っ、離してくださ、」
「……落ち着け、大丈夫だ」
「…私のせいで、…っ、」
今にも壊れちまいそうな女は、
"ごめんなさい…っ"
消えそうな声を震わせて、そう言った。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時