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江戸の街にも少しずつ慣れてきた頃。
私はというと僅かに緊張していた。
今日は、新八くんのお姉さんである、お妙さんと初めてお会いする日。
「姉上ー!」
新八くんがそう声をかけると、振り返ったのはとても優しそうな女性だった。
(……美人さん、)
「あら、新ちゃん。銀さんに神楽ちゃんも。……あなたは、もしかしてAちゃん?」
「…!はい、」
「あら、やっぱり?新ちゃんからよくお話は聞いてるわ、銀さんに変な事されてない?」
「初対面でどんな話してんだ。ってか俺のイメージどうなってんだ!」
「言葉通りのイメージよ。だってAちゃん可愛いもの。私心配で、」
「ありがとうございます、銀さんたちのおかげで楽しく過ごせてます」
「ほらみろ、聞いたか?俺のおかげだってよ、俺の」
「銀さんったらその歳でまだお世辞も分からないのね」
「お世辞じゃねーし、Aはいつも本音しか言わねーの」
「……あの、」
いつの間にか二人の言い争いが始まってしまった。
二人がどんどんヒートアップしていく中、常に笑顔を絶やさずにいるお妙さんが逆に怖くて、乾いた笑いが漏れた。
どうしたら良いものかと戸惑っていると、隣で小さくため息をついた新八くんが、二人の間に割って入った。
「ちょっと、二人ともやめてくださいよ。Aさん困ってますよ」
はっ、と我に返ったように私を見た二人は、パタリと言い合いをやめた。
「まぁ、私ったらすっかり熱くなっちゃって。行きましょ、Aちゃん」
「わ、はいっ、」
お妙さんは不意に私の腕を掴むと、ずんずんと歩き始める。
戸惑いながらもついていくと、突然ぐんっと後ろから引っ張られた。
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作者名:日向 | 作成日時:2020年10月10日 23時