二十四話 奇襲 ページ26
「なっ…」
腕を振り払おうとした綾部の手は脱力した。
温かい。雨上がりの匂いと、この優しい香りは…。
「…A」
「ん？」
「ありがとう」
「…えっと、どういたしまして」
不器用だが彼女の視線は母に似た優しさが込められている。
手が退くと、頭に風が冷たく当たった。
なんだか物足りない。
「それにしても、血霧衆…妙な話だと思わないか？」
「なにが？」
「一番強いと言われているのに、どうしてあんなにも情報やら噂が流れているんだ？おかしな話だろう」
綾部は目を見開き、ハッとした顔になる。
「気が付かなかった…」
「気が付かない程、世に浸透しているあたり誰かが噂を流している。その誰かさんは、勿論血霧衆」
この拭いきれない違和感の正体は、存在の自然体だ。
どうしてそこまで何も感じない？
今日の今まで、何も感じていなかったのも、余程の強さ故か…。
冷たい風が、身体を通り抜けていく。
雲が移動して、月は隠れ暗くなる。
「さむ…」
反射的に出た言葉。綾部はジッと見ると、Aに近づいて手を握った。
「ん…？」
「これなら温かいでしょ」
「まあ、な」
大人しく握っていたかと思えば、綾部の手は彼女の手を軽く握り返し、指と指を絡ませ合った。
身体をよじった反応が面白かったのか、手の甲を指でなぞったり、
離したと頭によぎらせておきながら再度触れるか触れないかで手のひらを人差し指でツッと移動させる。
「綾部…」
微かに息が上がっている。
綾部は口角を上げて、手首をつかみ、自分の方へと彼女の身体を引き寄せた。
頬に手を添えられ、暗闇で思考が追いついていない。
Aの事を、欲心を起こした瞳で綾部は見つめていた。
「そこまでにしておけ」
捕まれていない腕を強い力で引かれ、背中に鋭い痛みが走る。
傷口に刺された。
腕を背中に回され、身動きが取れない。
「久々知先輩…！」
「苦無を刺したくらいでこんなに弱っちゃうんだ。
前の天女はかなりしぶとかったのに」
口に血が溜まり、非常に生臭い。
地面に吐き捨てて、綾部が無事かを暗闇の中必死に確認する。
尾浜と、久々知。二人いる！
「綾部、長屋に…戻れ！」
殺意すらないものの、背中の痛みに耐えながら綾部に言い放った。
「わかっ…た」
震えながらも走り出した綾部を横目に、尾浜はなめた口調で挑発する。
「逃げさせて正義者気どりとはねえ」
突然腕を離され、地面に倒れた。
痛い。だけど、此処に居たい。
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みこち(プロフ) - 銀鬼のサブさん» 有り難う御座います、因みに今は、ブリーチと妖怪ウオッチのクロスオーバーを書いています。まだ途中ですが、書きながら笑ってます(思い出して) (2021年5月28日 21時) (
レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 初めまして。みこちと申します。素晴らしい作品です。私も兵庫水軍と鬼滅刃や犬夜叉とのクロスオーバー書いてますが、大変魅力ある夢主です。楽しみにしてます！出来ましたら是非お越し下さい。 (2021年5月13日 9時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
輝羽(プロフ) - 見ていると話に見入ってしまいました。友人にも勧めてみたらその人もこの物語や銀鬼さんのファンになっていました。(私も) 応援しています！ (2021年4月5日 17時) (レス) id: df4ce87693 (このIDを非表示/違反報告)
星波 きらら(プロフ) - ^_^さん» その言い方は無いと思います。主は文才アピールなんてしなくても滲み出る文才があると思いますよ。貴方のせいで占ツクの民度が下がるんです。嫌なら見るな。それしか言えません。モラルを守ってネットを使いましょう。 (2021年2月15日 23時) (レス) id: 0560786132 (このIDを非表示/違反報告)
凛／月影／霖(プロフ) - 新作おめでとうございます！江戸時代からのトリップなんですね！どんな風にことが進むのか楽しみです！更新頑張って下さい！！ (2021年1月1日 23時) (レス) id: 0b140bf78a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀鬼 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ginki/
作成日時：2021年1月1日 18時
