十一話 潜入 ページ13
表向きなどなくたって、忍びとしての仕事が増えるだけだ。
自室に一人。寝転がりながら天井を見つめた。
襖や床下、天井裏。囲炉裏にかまど、隅々に隠してある武器。
物騒な家の中で目立ったのは薬を作るための…否。毒薬を作るための道具だ。
すりつぶすための薬研。手のひらの大きさ壺には、沢山の種類の毒草の粉末と、蛇の毒の液体が入っている。
身体を起こして何をするかと思えば、襖の中に大量に保管されている壺を三つ取って開けた。
中身を椀の中に入れ、匙で混ぜる。
指に付けて舌で粉を舐めたら、難しそうな顔をしてまた襖の中を探る。
「速効性がない…、フクジュソウも入れてみるか」
毒の研究である。実験材料は山で採った毒草に、任務先で採ったものばかりだ。
飲むのは勿論Aである。耐性はあるものの、強すぎる毒を体に入れたら慣れるのにも時間がかかる。
「でーきた。学園長の茶にでも入れるか」
学園長にも毒耐性はあるだろうが、所詮は爺。油断さえしなければ殺せる。
家の中は誰もいない。師匠には弟子でも雇えと言われたが、生憎そのような趣味は無い。毒の訓練ですぐ死ぬだろう。
毒を筒に入れて、懐に隠した。
帯の中には苦無を仕込み、握り鉄砲も袖の中へ。
ごく普通の町娘は夜中に家を出た。行く先は団屋。
片付けられる前の死体から苦無を抜く。まだ使えるから回収しておきたかったのだ。
小さい苦無数十本を懐へ入れ、残りは足に取り付ける。
死体は埋めて、団子屋の扉を固く締めた。時期に腐れる。
学園に向かうも、妙にざわついていた。
木の陰から様子を窺えば、先刻の少年達だ。
「苦無が大量に刺さっていた…どこかの忍者って事は間違いない」
「団子屋の店主が老人に変装していた。忍者と忍者が接触したか」
「強盗の情報もかなり割れている。あとは忍者を殺した忍者…」
私の話になる前に、割って入った。
「すみません。道に迷ってしまって。オオマガトキ領に行く道を教えて貰えませんか？」
こんな真夜中に、しかも山奥にどうして町娘がいるのだろうか？
髪の毛をおろし、目元は包帯で隠した。声もいつもよりも高めで。
Aとは思えない容姿。雰囲気も全くの別物で、会うのが数回の者たちはまるで気づけない。
そもそもの地声ですら隠しているのだ。中世的で、少年のような声。
今は世間知らずの優し気な少女の声。
「道に迷ったの？俺たちもこれから行くところなんだ。一緒に行こう」
「ありがとうございます！」
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あまね(プロフ) - すきー！ (12月10日 11時) (
レス) @page34 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ルシア(プロフ) - 久しぶりの更新お疲れ様様です！！ (9月19日 21時) (レス) @page32 id: 75dd258af5 (このIDを非表示/違反報告)
みょーが - 主人公が毒にだけ味覚が働いたり、興奮で身体能力が上がったりするところ、とてもしっかり作り込まれているのを感じます！銀鬼さんの小説は場面展開がわかりやすくて物語の世界に没頭できます。これからも更新楽しみにしておりますね。 (2023年4月10日 22時) (レス) @page25 id: c021c07d07 (このIDを非表示/違反報告)
おろししょうが - 刺殺と視察掛けてるの天才 (2023年4月10日 19時) (レス) id: 1e91c7e46b (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 作品、読ませていただきました。時間の流れ方だとか誰がどんな動きをしているのかだとか、それぞれが繊細に伝わってきてしっかり理解することが出来て、本当に凄いと思います！キャラをおさらいしてまた来ます！続編楽しみにしています！ (2022年1月5日 20時) (レス) @page14 id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀鬼 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ginki/
作成日時：2020年9月21日 15時
