十話 とある衆 ページ12
夜中になり、彼女は走りだした。
袴を揺らして、金を持った袋を持って。
金を集めているのは武器の調達と情報収集が主な用途。
二刻ほど山の中を走り、着いた先は忍びの里。
ひっそりと松明がぽつりぽつりと見える。
崖を顔色一つ動かさずに下って行った。
「何奴？」
「あ、いたいた。いつもの」
「Aか。入れ」
案内したのはここの里の上忍。一二を争うもう一人の上忍がいるとかいないとか。
普通の苦無よりも長く鋭利で、様々な種類のものを持っているのは此処で買っているからである。
「三十本分ね。はい」
「今回もまあ大量だねえ」
上忍の後ろから出てきたのはまたしても上忍。
あ、争っている奴か。
武器庫の中も物騒だ。
普通の忍びには扱えないものばかり揃っている。
「もらったから帰る」
「えー、もう行っちゃうの？遊ぼうよ！」
「嫌。じゃあな」
青い目の人間は女顔のくせに体格がよくて強いからな。
腕を掴まれた時分かったが、力の強さがそこらの手練れとはけた違いだった。
赤目の男は口数は少ない物の異様な気配を放っているし、此処に居ると気が散る。
真夜中月明かりを頼りに崖を登り、朝方に家へと着いた。
働き口がないのは困るな。
町に行くと、やはりそのままにしておいた団子屋に人だかりができていた。
人をかき分けて、部屋の惨状を見つめる。
「そういえばこの子ここで働いていた…」
町人が呟く。
反応するように膝から崩れ落ちた。
「嘘でしょ…？」
ガクガクと肩を震わせていると、肩を叩いて話しかけてきた人がいた。
「あの、大丈夫ですか？」
「こっちで一旦休みましょう」
死体になれている…？変なの。
一本松の下まで来て、腰を掛けた。
話しかけてきたのは少年ら四人。
「あ…久々知…」
「A、大丈夫だった？」
そこに昨日の少年がいた。ということは忍術学園の生徒か。
「水、どうぞ」
竹筒に入った水を渡される。手を震えさせながら受け取った。
「顔色悪いけど大丈夫？まああんなの見たらそうなるよね…」
やったの私だけどね。
「二人って知り合いなの？」
「昨日学園に来て団子届けてくれたんだ」
「……ねえ！この後どうするの？」
「わからないです…、働き口が無くなってしまって」
「勘右衛門、そろそろ行かなきゃ…任務もあるし」
「わかった！ごめんAさん。またね」
四人はおどおどした様子でその場を去っていく。
松の根を撫でながら、鋭く見つめる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまね(プロフ) - すきー！ (12月10日 11時) (
レス) @page34 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ルシア(プロフ) - 久しぶりの更新お疲れ様様です！！ (9月19日 21時) (レス) @page32 id: 75dd258af5 (このIDを非表示/違反報告)
みょーが - 主人公が毒にだけ味覚が働いたり、興奮で身体能力が上がったりするところ、とてもしっかり作り込まれているのを感じます！銀鬼さんの小説は場面展開がわかりやすくて物語の世界に没頭できます。これからも更新楽しみにしておりますね。 (2023年4月10日 22時) (レス) @page25 id: c021c07d07 (このIDを非表示/違反報告)
おろししょうが - 刺殺と視察掛けてるの天才 (2023年4月10日 19時) (レス) id: 1e91c7e46b (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 作品、読ませていただきました。時間の流れ方だとか誰がどんな動きをしているのかだとか、それぞれが繊細に伝わってきてしっかり理解することが出来て、本当に凄いと思います！キャラをおさらいしてまた来ます！続編楽しみにしています！ (2022年1月5日 20時) (レス) @page14 id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：銀鬼 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ginki/
作成日時：2020年9月21日 15時
