gin and tonic [kym×hkt] (ページ3)

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最悪だ。思ってたより忙しい。忙しすぎる

酒を作りながら、カウンターにいる客の相手をする

...何人対何人だ？

樹の方を見ると、1人で数人の相手をしているのは同じ。でも、1つの話題で客をまとめて盛り上げている。それを目の当たりにして、毎度のことながら自分のコミュニケーション能力の低さを痛感する

俺には眩しすぎる。あいつが高校時代の1番の友達なんだから、人生はわからないもんだ。...無論、俺にとって1番であっただけで、彼にとってそうかはわからない

「...すごいね、ジュリくん」

手元は動かしながらもそちらに視線がいっていたのだろう

目の前の客が俺に声をかけた

「そうっすね...俺は敵わないです」

気まずくなって、少し笑う

「でもね...ホクトくんの作るお酒が俺は好きだよ」

優しい言葉尻で俺を救ってくれた客の顔を思わず見る...こんな人いたっけ

「今こんな奴居たっけ、って思ったでしょ。」

「え、なんで分かったんですか...」

「ちなみに俺、ホクトくんに作ってもらってるの今日で5回目」

「あっごめんなさい...」

この店指名制度とかあったっけ。そもそもバーテンダーにそんなのないよな？あくまで飲食店のスタッフ扱いだから指名とかしたら風営法に引っかかったりするよな...

「...色々考え過ぎだよ、難しい顔してる」

ふふっ、と客は笑った。なにその勝ち誇った顔。そして続けた

「マスターと知り合いだからちょっとお願いしただけだよ。俺、君が作る酒が好きなの。...あと、君のこともね。」

カラン、

氷が溶けてグラスの中で動く

「...今の美味しかった。もっかい作って」