【歌い手】出会いは偶然…だったよね？［2］【浦島坂田船】

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家に帰りつくと、急いで夕飯とお風呂を済ませて、自分の部屋に入る。
いつもなら家に帰れば誰かしら｢おかえり｣と声をかけてくれるのだが、生憎と今日は全員いない。


父は単身赴任で東北の方にいるため、滅多に会うことはない。
会うとすれば、お盆や年末年始だけだ。
その代わり、久しぶりに会うことが出来ればとても優しくしてくれる。

母は専業主婦で、普段から家のことを一生懸命してくれている。
今日も本当は体育祭に来る予定だったのだが、母方の祖父が体調を崩し、急遽実家に帰らなくてはならなくなった。
今朝、とても申し訳なさそうにしているのを思い出す。

あと、もう一人。
二個下の弟がいるのだが、今日は友達の家に泊まりに行くのだとか、何とか…
最近は反抗期に入り、全く会話をしていないため、アイツが今何をしているか全く分からない。
まぁ、変な事をしなければ別にいいけどね。


そんなことを考えながら通話の準備が出来たことをL○NEで伝えると、すぐに電話がかかってきた。
相変わらずの速さに苦笑いを浮かべながら、電話に出るとスマホから四人の元気な声が聞こえてきた。


う｢あ、繋がった。おーい、Aー？元気かー？｣

『うん、元気だよ。ちょっと疲れたけどね』

さ｢お疲れー。高校最後の体育祭、どうやった？｣

『すごく楽しかったよ。負けはしたけど、悔いはないよー』


｢そっかー。良かったなぁ｣と自分のことように喜んでくれる優くんの声を聞いて、思わず口角が上がってしまった。
｢歌い手｣として活動している時もそうだけど、本当にこの人は優しい人だと思う。
メンバーに対する気遣いは勿論、リスナーさんに対しても分け隔てなく接する彼の人柄には本当に頭が下がる。
時々、歳下かな？って思ってしまう時もあるけどね。


し｢今日、福岡は結構涼しかったみたいやな。体調悪くなるやつはおらんかったか？｣

『何人か怪我人はいたけど、体調不良者は出なかったって聞いてるよ』

し｢そっか。Aも大丈夫みたいやったし、安心したわ｣


｢お疲れさん｣と涼太くんの心地のいい低音が耳に届き、電話越しにも関わらず耳がくすぐったくなった。
活動時には絶対王政を掲げ、俺様キャラを振る舞いながらも、いじられ役として皆を楽しませてくれる彼。
口では｢ブス｣とか言って少しお口が悪い時もあるけど、リスナーさんに対して誰よりも強い愛情を持っていると思う。

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