【歌い手】出会いは偶然…だったよね？［2］【浦島坂田船】

【53】 ページ17

.


母｢Aー？まだ勉強してるのー？｣


突然扉の向こうから聞こえてきた母の声を驚き、ビクッと身体を震わせる。
せめて、ノックしてから声掛けてよ…


『…勉強は終わったよー。今から部屋を出て、歯を磨こうとしていたところー』


扉を開けながらそう言うと、｢あら。そうだったの？ごめんねー｣と悪びれる様子もなく笑う母。
悪気はないみたいだから、許すとしよう。


母｢あ、そうだ。さっきからAの携帯、通知が沢山来てるわよ｣

『…通知見たの？』

母｢違う違う。通知が来た時、ブブッてなるでしょ？あれがさっきからずっと鳴ってるの。お友達かもしれないから、返信だけでもしてあげた方がいいんじゃない？｣


『了解〜』と呟きながら部屋を出て、まずは歯磨きをする為に洗面台に向かう。

それにしてもビックリしたぁ。
お母さんが通知画面を見たのかと思って、ヒヤヒヤした。
多分、お母さんのいう｢ブブッ｣ていうのは、通知が来た時に鳴るバイブレーションのことだろう。
見られたらまずいものがある訳では無いけど、やっぱり嫌なものは嫌だしね…

歯磨きを終え、一度リビングに行くと母から｢はい、スマホ｣と私のスマホを渡された。
部屋に戻ってから通知画面を開いてみると、確かにここ10分の間で沢山の通知が届いている。
そのほとんどは、｢彼ら｣からのメッセージだった。

優確か明日が試験やったよな?頑張ってな!!応援してるで!!
千歳Aが一生懸命やってたのは、俺達が一番知ってるから。あんまり気負わんで頑張ってな
涼太変に緊張せずにいつも通りにすれば、大丈夫やから。終わったら全力で褒めてやるから、頑張って来い!
渉最後の最後にごちゃごちゃ言うのはアレだから、シンプルに言います。頑張れ!無理するな!以上!


彼らのエールに思わず笑みがこぼれる。

本当に優しい人達だなぁ。
いつか、恩返しが出来たらいいなぁ…

そんな事を考えながら、返信するために指を動かす。

Aありがとう!正直凄く緊張するけど、変に気負わないようにするね!頑張ってきます!!

返信を送ると、いつものようにすぐ既読がつき｢頑張れ！｣、｢ファイト！｣など更にメッセージが送られてきた。
その一つ一つに感謝しながら、今日は早めにベッドに着くと静かに眠りに落ちていった。

【54】志麻side→←【52】 2017年 春

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す