【歌い手】出会いは偶然…だったよね？【浦島坂田船】

【13】 ページ21

すっかり暗くなった街中を急ぎながら、ライブ会場へ向かう。
一応道に落ちてないか確認してみたが、やはり財布は落ちていなかった。

目線を下にしたまま曲がり角を曲がる。
すると、


？1｢！おっと…｣


下を見続けたまま進んでいたため、人が来ていたことに気がつけずにぶつかってしまった。
私はその衝撃で尻もちをついてしまったが、相手はよろめいただけで転びはしなかったようだ。
頭の上で誰かがぶつかった相手の心配をしているみたいだが、正直内容は頭に入ってこない。
でも、とりあえず謝らないと。


『す、すみません。大丈夫でしたか？』

？1｢あぁ、大丈夫です。こっちこそすみません。お怪我はありませんか？｣

『はい、大丈夫です。本当にすみません…』

？2｢気にせんで大丈夫ですよ。それより、立てますか？｣


視界の端に誰かの手が入る。
どうやら手を差し伸べてくれているみたいだ。
少しためらったけど折角差し伸べてくれたのでそれに甘えて手を掴み、ゆっくりと立ち上がる。

…それにしても、聞き覚えのある声だな。


『ありがとうございます。助かりまし…た…。』


ズボンについた砂を払いながら、顔を上げると目の前にいたのは、昨日駅で会ったあの男性達だった。
驚きの余り目を見開き、目の前の四人を見つめる。


『あ、えっと。お久しぶり…です？』

？2｢そう、やね。久しぶりやね…。｣


手を差し伸べてくれた人が苦笑いを浮かべる。
まぁマスク付けてて目元だけだから、多分そんな表情なんだろうなって感じだけど。
その人の後ろにいた目元にホクロがある人が私の顔を見ながら尋ねる。


？3｢こんな所でどうした？従姉妹の家、こっちなん？｣

『いえ。その…実は財布を落としてしまって…』


｢えっ！｣と、男性四人の声が重なる。


『財布には、コインロッカーの鍵とあらかじめ買ってた帰りの電車の切符も入れてあるんです。だから、財布がないと帰ろうにも帰れなくて…』


言い終わると一気に不安が大きくなった。
油断していると涙が出そうになるので顔を伏せる。


？3｢どこで落としたとか、心当たりはある？｣

『はい、一応。』

？1｢どこで落としたんだ？｣

『…多分ライブ会場です。今日この近くのライブ会場でライブがあったので。』


顔を伏せたまま答える。
あ、ダメだ。泣いてしまいそう。


？4｢それなら、ライブ会場に行ってみよ。俺らもついて行くからさ。｣

『え…？』


顔をあげるとその人は私に向けて笑顔を浮かべた。

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