第六十五訓「女の涙に勝るものなし」 ページ15
目を覚ましたら油や鉄の臭いが充満する部屋にいた。
私の横には源外の機械、三郎が座っている。
どうやら源外の店には来れたらしいが新八とたまの姿は見当たらない。
向こうから声がするので耳を澄ましてみると、銀時と源外の声がする。
「…A、お前無事だったのか」
『……まぁな』
新八が庇ってくれたから私は無事だ。
その際にある物も託された。
流山が作る機械は美しく、繊細で華奢、まるで生きた女のような機械だった。
機能よりもいかに人間に近づけるか。
機械に心を宿す。
流山は人間を作ろうとしていた。
機械とは人に使われる道具の枠を出てはいけないもの。
流山が変わったのは一人娘が死んだ時、芙蓉プロジェクトの「芙蓉」とは流山の娘の名、つまりこのプロジェクトの目的は死んだ娘を蘇らせること。
たまにはその種子、芙蓉の人格データが組み込まれている。
流山を殺したのも、芙蓉の人格データが入ったたまではなく、流山の計画の意味を知り、全てを自分のものにしようとした人物、芙蓉プロジェクトの副主任、目黒博士だった。
源外の前にあるテレビには、事件当時の映像が流れている。
恐らくこれは、たまが見たものだ。
横たわる流山の指がピクリと動き、ゆっくりと、こちらに近付いてくる。
「何をしている、芙蓉。早く逃げるのだ」
皮膚が割れ、流山から煙が立ち焦げる。
そして見たことのあるそいつへ変貌した。
［必ず迎えにいく、だから、今は逃げろ］
「流山はまだ…生きている。伍丸弐號の中に」
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作者名：憐
| 作成日時：2014年3月12日 2時
