延長線上 19 ページ19
「はあ、どうしよう」
幾度目かも分からない重い溜め息をついてぼやく。あの居酒屋の件から早くも三日が過ぎた。月曜日というものは元より憂鬱なものであるが、今週に限っては更に憂鬱である。言わずもがなその原因はコネシマにあり、答えを出せずにいる自分でもあった。
あの後は流れでお開きになり、コネシマは特に気にしている様子もなかった。それはそれで有り難い思いなのだが、符に落ちないと思えばそれもそうである。
「これからは俺もあんな下手くそな演技せんでええし、楽やなあ」
去り際にコネシマはそう言った。その下手くそな演技とやらにまんまと騙されてた私は微妙な愛想笑いすらままならなかった。月曜日からコネシマがどういった態度で私に接するのか想像もつかない。
「でもな、Aも返事考えといてや。俺は大真面目に言ってる」
好きだよ、と付け加えてコネシマはそう言ったのだ。もうそこから背を向けて逃げようだなんて、そんなことできやしない。私だってコネシマを好きになりたかった。なれれば、幸せだと思う。しかし、そんな関係に今更なれるのか。気恥ずかしい思いの方が勝ってしまう。腐れ縁で、お互いなんてありえないって、そう笑いあってきたのに。
しかし、そう思ってるのは私だけだったのだろう。現にコネシマは私に好意を抱いてると言ってのけた。それはいつからだったのだろう。どんな思いでコネシマは私に接していたのだろう。
「あーー、もう」
会社の前まで来て足が竦む。もうコネシマは来てるだろうか。そうしたら、いつものように声をかけていいのか。おはよう、今日もダルいねって。脳内でシュミレーションを繰り返していると、ぽんと誰かに肩を叩かれる。
「おはよう、Aさん」
「え、あ、おはようございます」
振り向けば例の先輩であった。丸っきり頭の中はコネシマでいっぱいいっぱいだったために、すっかり忘れていた。先輩は少し照れながら、この前はありがとう、とはにかんだ。端正な顔立ちによく映える可愛らしい笑顔だ。
「また誘ってもいいかな」
「私も楽しかったし、お酒も美味しかったです」
「家には年代物のワインもあるよ。趣味がそんな程度のことしかなくてね。でも、美味しいんだ」
今度おいでよ、そう言う先輩は大人っぽいの何者でもない。感じる余裕も趣味も話し方もコネシマとは段違いである。そうそう、私はこういう人がいい。歳相応の、リードしてくれる人なんて最高だ。しかし頷けない自分がいるのも事実であった。
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まつ(プロフ) - 完結おめでとうございます!香さんの書く文章が本当に大好きです。次回作が最後になってしまうのは悲しいですが楽しみに待っています!お疲れ様でした!! (2018年8月26日 11時) (レス) id: cd163d6252 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - 香さんのコネシマめっちゃ好きです。更新とても嬉しかったです!この先の展開も気になります!笑 (2017年12月26日 0時) (レス) id: 3e7c414859 (このIDを非表示/違反報告)
みいろ - 夢主ちゃんとコネシマの絡みが好きすぎて禿げそうです…更新頑張ってください! (2017年4月27日 23時) (レス) id: 538187bfc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:香 | 作成日時:2017年4月20日 23時