延長線上 14 ページ14
あのような啖呵を切ってから、早くも一ヶ月。お互いがお互いのことを好きになる、なんて無謀なことを言い出しておきながら、コネシマの私に対する態度は全く変わることはなかった。しかし、こちらから何か行動を起こすのいうのも躊躇ってしまう。
「なに難しい顔してんねん」
「そんな顔してた?」
「してたしてた」
表情に出ていたらしい。隣に座るコネシマを横目にパソコンに向かう。ふああ、と大きな欠伸をするコネシマを窘めるも、欠伸というのは移るために、私まで大きな欠伸をしてしまう。「お前もしてるやん」と笑うコネシマに反論が出来ない。
「あ、そうだ。俺ちゃんと言ったで、あの子に」
「本当?よく頑張ったじゃん」
「そう、俺マジで頑張った」
自分で言ってれば世話ない。誇らしげに胸を張っているが、本来そう誇れることでもない。そこでコネシマは私の顔を覗き込むようにして「でな、それでな」と悪戯っ子のように笑みを噛みしめる。
「飲みに行くって約束したろ」
「ああ、そうだね、したした」
「来週の土曜日!どうや?」
「え、あ、来週の土曜日....?」
言葉に詰まる私をコネシマは不思議そうに見つめる。と、その時、後方から「あの、Aさん」という声が聞こえた。振り返れば、企画部の先輩。あ、しくった。瞬時にそう思った。
「来週の、土曜日のことなんだけどね、六時に駅前でどうかな」
「あーー、はい、大丈夫、です」
「うん、じゃあ楽しみにしてるね」
それだけ言って、先輩は去っていく。少しの間の何とも言えない沈黙の後に、コネシマが「はーん、なるほどな?」とニヤニヤと笑う。
「そりゃ俺とは飲みに行けんよなあ」
「いや、その、さ、あの人は」
「何焦ってんねん、ええやろ、あの先輩、俺から見てもイケメンやで」
そういうことじゃない、そう言いたいのに口から出てこない。そもそも、私は何を言いたいのだろう。引き止めてほしい、なんて面倒くさいことは思わない。けれど、どうもモヤモヤする。あの先輩とは、以前に同じ企画を担当し、その際に知り合った。そのお疲れ様会みたいな感じで、向こうからご飯のお誘いを頂いただけである。...何故こうも言い訳っぽいのか。
「...お互いのこと好きになる、なんて言うてもうたけど、別に相手作っちゃダメとは言うてないから、遠慮せんでもええよ」
控えめに呟くようにコネシマは言う。「でも私、コネシマと飲みに絶対行く」自然とそう口に出てた。「当たり前やろ」コネシマはそう言って笑った。
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まつ(プロフ) - 完結おめでとうございます!香さんの書く文章が本当に大好きです。次回作が最後になってしまうのは悲しいですが楽しみに待っています!お疲れ様でした!! (2018年8月26日 11時) (レス) id: cd163d6252 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - 香さんのコネシマめっちゃ好きです。更新とても嬉しかったです!この先の展開も気になります!笑 (2017年12月26日 0時) (レス) id: 3e7c414859 (このIDを非表示/違反報告)
みいろ - 夢主ちゃんとコネシマの絡みが好きすぎて禿げそうです…更新頑張ってください! (2017年4月27日 23時) (レス) id: 538187bfc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:香 | 作成日時:2017年4月20日 23時