1.鮮明に。 ページ2
*
「Aちゃんッ!!」
ガララララッ、といつもより少し強く扉が開く。入ってきたのは何時もお見舞いに来てくれる友達だった。
寝台の上で静かに身体を休めていたAはビクリと大きく肩を震わせた。
Aは昔から大きい音が苦手だった。だからいつもは静かにみんな入ってきてくれる。けど、今日は大きい音を立てて入ってきたからAは少しムッとしている。
息を切らした友達は肩で呼吸をしながら近付いてくる。それほどの朗報でもあるのだろうか。
「Aちゃん、大変だよ!!
また虎(敦)が出たんだッ!!」
「虎ぁ?何、それ。
私ずっとここにいるからわからないよ。」
呆れたような顔をして友達に云う。
人喰い虎。
その正体はこの孤児院を追い出された中島敦という少年だ。その少年は月下の異能力者。だから虎に変身するんだ。
(虎はもちろん知っているよ。
少し、友達の反応が気になっただけ。)
Aはそんなことを思いながらケケケと静かに笑った。
「え、でも知ってるでしょ、虎。
あの気味の悪い敦だよ。
本当にやめてほしいよね、居なくなれば良いのにさぁ。
追い出されたから此処には居ないけど、この世から消えてほしいな!!」
ニンマリと笑いながら話す友人にAは嫌気を覚えた。
(こういう人とは居たくないな。)
Aは友人をなんとか追い出して、手元にあった本を開いた。
少し難しいけれど、とても面白い話。
だが、難し過ぎたのかもうAは眠っていた。
コンコン、とノックの音が響く。
其処に入ってきたのはあの友人。
友人は彼女の点滴をプツリと切った。そして切ったハサミは彼女の手元へと。
此処からが本当の始まり。
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作者名:翡翠蘭 | 作成日時:2019年7月11日 1時