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1.鮮明に。 ページ2





「Aちゃんッ!!」


ガララララッ、といつもより少し強く扉が開く。入ってきたのは何時もお見舞いに来てくれる友達だった。

寝台の上で静かに身体を休めていたAはビクリと大きく肩を震わせた。

Aは昔から大きい音が苦手だった。だからいつもは静かにみんな入ってきてくれる。けど、今日は大きい音を立てて入ってきたからAは少しムッとしている。

息を切らした友達は肩で呼吸をしながら近付いてくる。それほどの朗報でもあるのだろうか。


「Aちゃん、大変だよ!!

また虎(敦)が出たんだッ!!」


「虎ぁ?何、それ。

私ずっとここにいるからわからないよ。」


呆れたような顔をして友達に云う。

人喰い虎。

その正体はこの孤児院を追い出された中島敦という少年だ。その少年は月下の異能力者。だから虎に変身するんだ。

(虎はもちろん知っているよ。
少し、友達の反応が気になっただけ。)

Aはそんなことを思いながらケケケと静かに笑った。


「え、でも知ってるでしょ、虎。

あの気味の悪い敦だよ。
本当にやめてほしいよね、居なくなれば良いのにさぁ。

追い出されたから此処には居ないけど、この世から消えてほしいな!!」


ニンマリと笑いながら話す友人にAは嫌気を覚えた。

(こういう人とは居たくないな。)

Aは友人をなんとか追い出して、手元にあった本を開いた。

少し難しいけれど、とても面白い話。


だが、難し過ぎたのかもうAは眠っていた。

コンコン、とノックの音が響く。

其処に入ってきたのはあの友人。

友人は彼女の点滴をプツリと切った。そして切ったハサミは彼女の手元へと。


此処からが本当の始まり。

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作者名:翡翠蘭 | 作成日時:2019年7月11日 1時

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