【ヒプノシスマイク】傷みは隠さない【有栖川帝統】 (ページ10)

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過労ページ10

帝統side

目の前でふらついている女がいた。

パチ屋で大勝ちした今日は乱数と幻太郎にメシを奢った。今日は幻太郎の家に泊まることになり、俺は飲み足りない分の酒の買い出しに駆り出されていた。

そんな時に見つけたふらつく女。見覚えのあるプリン頭だった。

もしかしてと思い俺は女に近づく。その時、女は端の方に座り込んでしまった。俺は慌てて駆け寄る。

顔の半分以上がマスクに覆われた女はAだった。荒い息遣いがこちらにも分かる。悪寒のせいなのか震えていて、冷や汗もかいている。

俺は来ていた上着をAに掛けて大丈夫かと聞く。

｢……え、帝統？何で……｣

｢いいから。立てるか？ほら、俺に掴まれ｣

朦朧としているのだろうか、俺の言葉に返事をしない。俺はAの腕を引っ張り無理やり立たせる。

とても歩けるようには思えないので抱き上げた。

俺はそのまま幻太郎の家に走った。酒が入ったビニール袋がガサガサと揺れた。

……

｢まっさか帝統が弱った女の子を連れ込んでくるとはねー！｣

そう言ってにこにこ笑うウチのリーダー、飴村乱数。

｢全く困りますねえ、家がないからって人の家にガールフレンド(病人)を連れ込むなんて｣

そう言って困り顔をするウチのチームメイト、夢野幻太郎。

確かに、幻太郎の言う通りであることは間違いないので反論出来ない。

幻太郎に頼み込んで布団を出してもらいAを寝かせた。

Aは先程よりも落ち着いていて、今は眠っている。

幻太郎はAの額に濡れタオルを置いて、氷枕を作って置いた。乱数はあまり興味がなさそうに俺が買ってきた酒を飲む。

幻太郎は俺の横に座り、彼女はどこの馬の骨の者ですかと問うた。

｢どこの馬の骨っていうか、前に俺にメシと金貸してくれたやつ｣

｢貴方って人は見境なしに……｣

｢帝統ぅ～さすがに未成年っぽい子に集っちゃメッ！だよ！｣

｢う、うるせーな。腹減りすぎてそれどころじゃなかったんだよっ……てか、コイツの熱絶対過労だよ｣

過労……と片言に乱数が言う。

｢まあ小生明日は家を空ける予定があるので帝統が彼女を見ていてください。じゃあもう寝ます｣

｢っえー！幻太郎もう寝ちゃうのぉ！ふーん、じゃあ僕も寝よーっと｣

じゃあおやすみなさいと言って2人は立ち上がる。

俺は胡座を崩して2人に呼びかける。

｢おいどこ行くんだよ？｣

｢寝室です。あなたは彼女と一緒に寝てくださいね｣

｢え｣