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似た者同士 ページ44

帝統side


Aに再び会うことが出来たあの時、俺は非常に驚いた。


あの時───池袋の路地裏で会った時、Aは山田一郎のこと何も言っていなかった。


その後乱数に連れて行かれたキャバクラでAとまた会った時、俺が知っていたAとは全く違う女になっていた。


アフターを依頼したのはAが本当に変わったかどうか見るためだった。


実際に話してみると中身の部分では特別何かが変わったという訳ではなかった。


だけど、気に食わなかった。


だってAは、頑なに山田一郎の家にいたこと、俺に何も話さなかったからだ。


『……大学、本当に良かったのか?』

『……うん、もういい。大学に拘ってたっていうか、母親に無駄に拘ってたってだけだから。母親とは家を出てからもう会ってないんだ』


この時、どうしてAは本当はその後に山田一郎の家に行ってたと言ってくれなかったんだろう。


その後に俺が山田一郎の名前を出すとAは戸惑ったように俺を見た。


……いや、違う。俺だってAに話していないことが沢山ある。というか、話していないことだらけだ。


なのに、Aには話して欲しいだなんて、お門違いも甚だしい。


Aの小さな細い手を繋いでいるこの瞬間だけは、Aは俺の側にいて俺を見ている。


それだけでもう充分だった。


「帝統、靴乾かさないと」


海水で濡れた足を動かして俺は海から出る。


Aは新しい靴買った方がいいよねと呟く。


Aは俺の手を引いて歩き出す。


ぐちゃぐちゃになった靴が歩く度に気持ち悪い。


「うぇー靴、気持ち悪ぃ」

「そりゃそうだよ、あはは」


Aが笑う。潮風に髪がなびく。


俺ではAを救い出すことは絶対にできない。


それでも、少しでもAの心が休めるような居場所を作ることは出来るのだろうか。


きっとこのままここに居ても俺たちは救われない。一時的なもので、またAは身を削って働くのだろう。


俺だってここにずっといることは出来ない。


もうすぐディビジョンバトルが始まる。


早く帰らないと。乱数と幻太郎相当怒ってるんだろうなあ。


なあ、俺もお前もこのまま逃げてるだけじゃダメなんだろうな。


俺たち、俺たちの母親とちゃんと向き合わなきゃいけないんだよなきっと。


誰にもあまり自分のことを話さないこと、境遇でさえも似た者同士だよ俺たち。


このまま2人で、俺達のこと誰も知らない場所でずっと居られたらいいのに。

あの時のような→←何も相談してくれなかった



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海老天ぷら - おと姫と愉快なサカナたちさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!不定期更新ですが、がんばります! (2021年12月10日 19時) (レス) @page35 id: 8ac8a7e5a1 (このIDを非表示/違反報告)
おと姫と愉快なサカナたち(プロフ) - すごく引き込まれます…更新頑張ってください!! (2021年11月9日 7時) (レス) @page34 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海老天ぷら | 作成日時:2021年1月28日 10時

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