【ヒプノシスマイク】傷みは隠さない【有栖川帝統】 (ページ32)

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神は子供のようにページ32

ぽたぽたと熱い液体が私に垂れる。

熱い身体で抱きしめられて、早く脈打つ鼓動の音を聞く。

不思議と不快ではなかった。

でも、やめてほしかった。

離して欲しかった。

私は一郎を見る。

あんなに貫禄がある一郎が、情けなく見えて。

駄々を捏ねて泣く子供のようで。

……だけど、どうしても私は一郎の傍には居られないと思った。

力の限り一郎から離れようとするが、その力の更に倍の力で抱き締められて、私の貧相な体は悲鳴を上げている。

｢なあ三郎、お前からもなんとか言ってくれよ。Aここを出るって言うんだよ。有り得ないよな、俺はここに居ていいって、ここで働けばいいって言ってるのに｣

｢……いち兄｣

｢三郎もAのこと、気に入ってるもんな？二郎だってAのことを気に入ってる。だから居てもいいだろ？な？Aは優しいからさ、俺たちに迷惑かかると思ってそう言ってんだよ。三郎からも言ってくれよ、な？｣

｢いち兄！！｣

三郎が大きな声を出した瞬間に一郎に一瞬の隙が生まれて、少しだけ力が緩む。その隙に三郎が私を引っ張りあげた。

私は三郎に身を委ねずに一郎を見据える。

｢ごめんね、一郎。ありがとう。大丈夫だよ、別にここを出るって言っても、もう会わないって言ってる訳じゃないよ。だから｣

｢それじゃ嫌なんだよ！！｣

一郎の綺麗な目から涙が零れていく。

三郎は動揺していた。それもそうか、三郎も二郎も一郎のこと神のように尊敬しているのだ。そんな神は子供のように駄々を捏ねて泣いている。

ああ、でも、一郎もやっぱり年相応に悩んで嫌がって、泣いて。

私、知らなかったよ。

私から見た一郎はいつも大人になるべく背伸びして、とにかく背伸びして、自分を犠牲して自分じゃなくて相手のことを第一に考えてた。

こんなに自分自身の感情を表に出したの初めて見たよ。

きっと三郎もそう思ってる。

だから驚いてる。

でもね、ごめんね。

私は、ここには居られない。

迷惑かける前に早くここから出ないといけないの。