【ヒプノシスマイク】傷みは隠さない【有栖川帝統】 (ページ31)

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俺の傍からページ31

一郎side

居なくなる？

Aがここから居なくなる？

俺の傍から居なくなるだって？

俺の傍から？

どれだけお前に会いたかったと思ってんだよ。

どんな思いでお前をここに留めようとしていると思ってんだよ。

何勝手にどっか行こうとしてんだよ。

また俺の目の届かない場所に行くのか？

俺が守りたいと、大切にしたいと思った人間はまた俺から離れていくのか？

手から零れ落ちてもう戻らなくなるのか？

……もう耐えられない。そんなこと、絶対に許さない。

A、お前だけは俺から、俺の傍から離れるな。

なあ、おい、そんな目で俺を見るなよ。

何で俺を見てくれない。

俺を、俺を見て。誰も離れていかないでよ、俺を独りにしないで。

手に力が篭る。どうしても離したくない。

物理的にも心理的にも、俺から離れるなよ。なあ、おい。

｢痛っ……｣

はっとして我に返ると三郎がAの肩を掴む俺の腕を握り締めていた。

その力はとても強くて。あんなに小さかった三郎はいつからこんなに大きくなったのか。

……なあ、三郎も俺から離れていくんだろ。二郎だって俺から離れていくんだろ。

兄として、家族として、弟たちの成長は喜ばしい。

だから、お前らが離れるのは、嫌だけど、俺は見守りたい。

だけど、Aだけは、Aだけは嫌だ。

｢いち兄！｣

とうとう三郎は俺からAを引き剥がす。

三郎が顔を歪めたAを引き寄せて俺を見る。

その目が現す感情を俺は知っている。

それでも、やめてくれよ。Aから手を離してくれよ。

やめてくれ！

俺はAを無理矢理三郎から奪い、抱きしめる。

自分でもわかる、体が熱くなっている。

｢なあ三郎、お前からもなんとか言ってくれよ。Aここを出るって言うんだよ。有り得ないよな、俺はここに居ていいって、ここで働けばいいって言ってるのに｣

｢……いち兄｣

｢三郎もAのこと、気に入ってるもんな？二郎だってAのことを気に入ってる。だから居てもいいだろ？な？Aは優しいからさ、俺たちに迷惑かかると思ってそう言ってんだよ。三郎からも言ってくれよ、な？｣

｢いち兄！！｣

……何だよその目。

何でAがそんな目で俺を見るんだよ。

なあ、おい！