【ヒプノシスマイク】傷みは隠さない【有栖川帝統】 (ページ20)

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こんなのページ20

帝統side

小さく蹲る女。見覚えがあって何となく追いかけてみた。

俺が知ってたプリン頭の女は真っ黒に塗り潰された頭になっていた。

声をかける俺の姿を写すその瞳は酷く澱んでいた。

｢帝統……あはは、ごめん、あはは……｣

｢おま……一体どうしたんだよ｣

可愛らしい絵柄があしらわれた傘をAの頭の上に持っていく。

この傘は先程乱数が貸してくれたものだ。

乱数の事務所でミーティングと称して遊びの賭けをしていた。負けた俺が酒と煙草を買いに行くことになったのだが、傘なんか持っていない俺は乱数に借りたのだった。

Aは乾いた笑い声を出しながら膝を抱えた。

何かあったんだろうな。ただそれを闇雲に聞くのはどうかと思った。

……

俺がAを探すにはあまりもAのことを知らなさすぎた。

あれからふらりと居なくなったAをもうずっと見ていない。

交友関係というのか、Aと多少関係のある男、宮本はAのことを知っているかもしれないと思い、会いに行くことにした。

Aが勤めていたコンビニ。深夜のコンビニは笑ってしまうほど客が来なかった。

レジでやる気のなさそうに突っ立っている宮本に近寄る。

声をかけると宮本は少し驚いた顔をしていた。

｢なあアンタ宮本って言ったよな。Aのこと、知らないか？｣

｢え？アレっ、Aチャンの彼氏くんじゃん？｣

｢彼氏じゃねーよ｣

｢あーAチャンねー、もう1週間も無断欠勤だよ。店長が家にも電話したんだけど、帰って来てないの一点張り。勿論本人の電話は繋がりもしないよ｣

まあもう事実上クビになってるけどと宮本は肩を竦める。

宮本はどこを見るわけでもなく俺から視線を逸らす。

｢なんかAチャンて家庭環境結構難アリって感じだったし家出かもね。店長から聞いた話だけど、親から捜索願も出されてないみたいだし｣

掃除しないとと言ってレジから出てきた宮本はモップを取り出す。どうやらAが居なくなっても深夜のコンビニの回転は問題なさそうだった。

……こんなのお前が居なくても何も問題ないって言っているようなものじゃないか。

俺はコンビニから出る。宮本が俺を呼び止める。

｢彼氏くんさ、Aチャンの連絡先知ってる？｣

｢だから彼氏じゃねー。知らない｣

｢一応教えておくから。君からなら出るかも｣

宮本はスマホを弄りながら紙にAの電話番号を書いて俺に渡す。

俺はポケットの残金を確認した。