燃やす ページ7
彼が術式を唱えると、それに呼応するかのように周りの木々が揺れ始めた。
「コッチまで来れる?」
葉や草が私たちを渦巻き、ヒユリは見えなくなった。
「ほら、コッチコッチ…!」
「っ!」
急に後ろを突かれた。
槍の柄かしら…!
「おい、大丈夫か!」
エリスが差し出す手を取り、立ち上がる。
「えぇ。…面倒ね。彼は蝶を使っていいって言ってたわ。この量…1人なら無理だけど2人なら出来るかもしれないわ。」
「何をだよ?」
かばんから、赤の蝶が入った瓶を1つ取り出す。
「焼き切るの…この草と葉を…!」
驚くか呆れるか、そんな顔をしたエリスだけど、うなずいてくれた。
「案外強引だな。いいぜ、東は任せな。西を頼んだ。」
背中を合わせて同時に術式を唱える。
蝶は反応して、私たちの周りに炎を生んでくれた。
熱いけど…火傷しないようね。
まぁ、実体がないからかもしれないけど。
「準備はいいか!?」
「えぇ!」
手で炎に変わった蝶に合図して、葉に燃え移らせた。
次の瞬間。
音を立てて燃え始めた…!
やがて渦は消え、視界が晴れた。
「っし…成功だな…。」
すると木に隠れていたらしいヒユリが出てきた。
「ゴウインだなぁ…せっかくボクが育てたタイセツな木たちが…。」
「抵抗してもいいって言ったのはお前だろ。そろそろいいか?」
エリスが指を鳴らすと、さっきの炎になった蝶が今度はエリスの手の中で燃え始めた。
やっぱり火傷はしないようね。
…不思議な仕組み。
「いいよ、いいよ、じゃあボクがアイテになってあげるね、チョクセツ、キミたちを殺すよ…?」
その少年は今日1番の笑顔を見せた。
まるで…子どもがクリスマスプレゼントをもらうみたいな…。
…彼は子どもじゃなさそうだし、第一人間じゃないものね。
私はできる限りエリスを援護して、ここを突破しなくちゃ…!!
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作者名:円香 | 作成日時:2018年8月7日 16時