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『余を受け入れろ。さすればその命、救ってやれるぞ』
羅刹天の生得領域、虚像の棘を抱えて動かない司に言い放つ
「どうすればいい」
『条件は──』
こちらを見上げる司、その顔を見て羅刹天は言葉が詰まった
千年前の記憶が脳裏に過る
『………気が変わった。出す条件は1つのみ
愛を教えろ』
「オマエ呪霊なのに愛を知りたいのか」
司は引いた様な顔をしながらも棘を手放さない
『あぁそうさ、余は愛を知りたい』
羅刹天を目覚めさせる程のその感情
負の感情から生まれた羅刹天にとって、理解出来ないものだった
これからこの子どもが、その身を顧みず救おうとした命が語ることだろう
司の腕の中から棘の姿が消えていく
空になったその手を見つめ、わかったと司は告げる
「だから、棘を救える力を寄越せ」
そうして羅刹天の力を得た司は、その人生の全てを愛の証明に使う事となった
……
…
……
問いかけに対して桐島は意味の無い言葉を紡ぐばかり
「司にそんなものなんて…」
この男が語るものも愛の一つの形かもしれない
だがつまらない、つまらない答えだ
羅刹天は桐島の顎を掴み、ほんの少し力を入れるだけで弱い人間の身体はミシミシと悲鳴を上げる
「つまらんな、オマエ」
蟲でも見るような、そんな目で桐島を見下ろす
「呪い如きが何を語って…!!」
「もういいだろ」
二人から少し離れた其処に、司が現れた
『遅かったなぁ』
領域内に広がる浅瀬を歩くたび波紋が広がる
「司っ司、司!」
桐島は姿を見るなり狂ったように名前を呼ぶ
「うるさい」
司は桐島に近づき、腹部へと触れた
「滅」
「グッ!ゴフッカハ!!」
体内に入っていたせいか、まだ残っている呪霊の核を破壊する
桐島にもダメージが入ったのか赤と青の混じった血を吐き出す
『余興はここまでのようだ』
羅刹天がそう呟くと領域は消え、地肌が曝け出された森へと戻った
桐島を蹴り倒し、鳩尾を踏み付けて首を束で地面に固定する
「フ、フフ…」
何がおかしいのか、独りで笑い出す桐島
「どうして…どうして狗巻棘なんだっ…」
何かに縋るような目をして見上げる
「俺は、司をこんなに…」
「僕はオマエのモノじゃない」
司の言葉に目を見開く桐島、次第にその瞳は水の膜を帯びて涙を溢れさせた
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新(プロフ) - 雪見だいふくさん» 雪見だいふく様コメントありがとうございます。作品へ好感を持ってくださり私自身もとても嬉しいです。実は先日、貴方様の作品を拝見しておりました。まだ六本木のくだりまでしか読めていなので、この後ゆっくり読みます!雪見だいふく様の作品の更新も心待ちにしてます (2020年12月4日 21時) (レス) id: 683216893f (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - 初めまして、いつも楽しく読ませていただいております。とても素敵で引き込まれる作品でとても大好きです!お身体に気をつけて新様のペースで更新頑張ってください (2020年12月4日 14時) (レス) id: 3dc274e14b (このIDを非表示/違反報告)
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