◇.隠した想い ページ11
｢気持ち良かった〜！やっぱお風呂はいいね！｣
かなりデカめの独り言を言いながら、風呂上がりにリビングに行くと、ソファーで寛ぐ男子生徒が1人。
こういう時は後ろから近づいて驚かすのが鉄則である。
足音を忍ばせ、ソファーの後ろにスタンバイして、タイミングよく立ち上がり
｢ワッ！｣
｢うわぁぁぁ！｣
さっきまでそこに座っていた男子生徒はドゴッっという鈍い音と共にとても綺麗にソファーの下に落ちる。ちょっと痛そうだな…。ごめんね。
｢あははっ！上鳴、大丈夫？｣
｢A！！何すんだよ、びっくりしただろ？｣
さっきぶつけた腰を押さえながら、上鳴は少し呆れ気味に私を見る。
｢ごめんね、なんか驚かせたくなったの！｣
と無邪気に笑ってみせると、ソファーの下から溜め息が聞こえた。明らかに、呆れたと言わんばかりのタイミングだった。 まぁ、気にしないけど。なんてを考えながら、ソファーに腰をかけ直した上鳴の前(ソファーの下)に座る。
｢A、髪濡れてるぞ？｣
｢うん、自然乾燥！｣
いや、風邪引くぞ！と言いながらドライヤーを持ってきて私の髪を乾かし始めた。本当は、上鳴に構って欲しくてわざと髪を濡らしたまま出てきた。
普段はお調子者の上鳴、だけど実は結構面倒みがいいのはよく知っている。小学校の頃からずっと一緒、いわゆる腐れ縁というやつだ。
｢すき。｣
｢ん？なんか言ったか〜？｣
ドライヤーの音は、私の言葉を綺麗に消してくれる。
｢ううんー、何でもなーい！｣
今更、こんな気持ちを伝えてもきっと困らせてしまう、だから友達以上を求めない。この関係がなくなるより、友達でいつづける方がいい。…………だから、隠すの。
｢なぁ、A。｣
髪を乾かしドライヤーの音が消え、上鳴の声がよく聞こえる。
｢なぁに？｣
｢…好きだ。｣
……え？
予想外の言葉に思わず振り返る。上鳴は今までにないくらい真剣な顔で私を見つめていた。その真剣な顔がこの告白が嘘ではないことを物語っている。
｢小学校の頃からずっと好きだ。｣
＊続＊
2019/9/26 風薙
続く
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作者名：風を薙ぐ硝子売り x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年9月16日 23時
