第 漆 幕 ページ8
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カタンカタン……カタンカタン……
規則的な音が聞こえる。
………戻ってきたのか。
体を起こすと倦怠感で体が重く頭が痛い。
血鬼術の後遺症だろうか。
刀は……ある。
ポタポタ……あれ?
俯いた時に落ちてきた透明な雫。
顔を触ると目元が濡れていた。
『ははっ…何泣いてんだろ』
さっきの出来事が夢であることを自覚しジワジワと苦しくなってくる。唇を噛み紛らわすと辺りを見渡した。
そこら中から感じる鬼の気配が気にかかる。
まるで腹の中にいるような居心地の悪さにさらに頭が痛くなってきた。
早く出たい。
さっさと終わらせよう。
どこか淡白な思考しか持てないのはきっと頭痛のせい。
ボクは目眩でふらつく体に叱咤し大きく床を踏みしめた。
しっかり前を見据え足を進めた。
一番鬼の気配が強い運転室へ。
『失礼します』
「だ、誰だお前!?」
この人は人間だ。鬼じゃない。
見る限り変わったところは無さそうに見える。
ボクは足元に目を向けた。
よく見ると床が脈打っているように見える。
地熱とは違う生暖かさが足の裏から伝ってくる感覚に背中に悪寒が走った。
『(この列車全部が鬼そのものなんだ。そして、特に気配が濃いのが床の下!)』
「ここから出ていけ!」
駅員がどこからか錐を取り出し無造作に振り回して威嚇してきた。
『待ってください!
貴方に敵意は「俺の夢の邪魔をするな!!」聞いてないしッ!』
ボクは後ろに跳んで避けつつ彼の説得を試みるも意味を成さない。
夢ってもしかして さっき見た夢のことだろうか?
幸せだが歪な夢。
あんなものに縋りたいほど今が嫌で、そこを鬼に付け込まれたと。
だとすると、
『なんて性格の腐った鬼だ』
吐き気がする。
何回か説得するも聞かない駅員。
仕方ない気絶させるか、踏み出すために体を低く沈めた瞬間。
がしゃーん!!
「オオッシャアア!!」
半裸のイノシシ男が降ってきた。
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