壱 ページ32
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──……ん！──
──A姉さん！──
──A！！──
『！』
目を覚ますと、白い天井が目に入った。
『終わったの「姉さん！！」ぅわっ』
視界が開けたかと思ったら、また目の前が真っ暗になる。
この圧迫感、誰かに抱きしめられているのか。
この匂いは
『たん、じろ……？』
ボクの呼びかけに抱きしめている本人、炭治郎の肩が揺れる。
というか、苦しい。
『炭治郎、苦しいから離して「嫌だ」ぇー』
「………離したら、またどこかへ行ってしまうんじゃないかって」
怖い。
そう言う彼の体は震えていた。
『体が大きくなっても泣き虫なのは変わらないね』
「泣いてない」
『頑固なのも変わらないね』
ほんと、変わらない。
ボクの本質も変わらない。
『鬼なんだよ？ボクは』
「知ってる」
鬼と戦ってる時に……聞いちゃったから。
声も震えている。何かを我慢しているんだろう。
服越しに胸板に耳を寄せると、少し早い心音が聴こえた。
「禰豆子だって鬼になったけどいつも一緒にいる」
家族だから。
姉さんも、家族だ。
そう断言する炭治郎の意志のブレなさに、心が揺らぐ。
なんて、真っ直ぐな子だろうかと。
綺麗だなと思うと同時に妬ましくも思ってしまう自分の心は彼と違って酷く汚れている。
離れないと汚してしまう。
「駄目だ」
ボクの心を匂いで察したか炭治郎の腕の力が強まる。
だから苦しいんだってば。
「ｯ鬼であることで俺から離れたいと思うなら止めてくれ。
再会したあの日から全然会えなくて俺、寂しかったんだぞ。
なんで寝静まった時に来るの？
なんで避けるようなことをするのｯ。
ずっと、会いたかったのに」
だから、黙ってどこかに行かないでくれｯ……。
『……(暖かいな…)』
程よい速さの心音と久しぶりの人肌に眠気が襲う。
───良い縁がキミを助けてくれる。
貴女の言う通りだね………鶯さん。
良い縁だ。
「禰豆子も同じ気持ちだと思う！」
『んー、分かったよ……』
瞼が重くなってくる。なんだか眠い。
『………勝手に、行かない……………から』
少し、眠らせて
炭治郎side
「ほんと！？………あれ、姉さん？」
『すー』
姉さんは眠っていた……俺の腕ので。
「っ！？」
今更ながら己の大胆さに羞恥で体がみるみる熱くなる。顔も真っ赤だろう。
暫く彼女の顔を眺めていて
「………………A (ﾎﾟｿｯ」
呟いた瞬間みじろぐ彼女に俺の心臓は飛び跳ねた。
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