近づく雨音、忍びけり【中】 ページ27
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止まない雨の中を足早に歩く。
足を動かす度に足元の雨水が跳ね、剥き出しの足を濡らし重みを増していく。
まるで「行かない方がいいよ」と示唆しているかのよう──。
「──エミ！」
待ち合わせ場所には 既にエミの姿があり、今朝と同じく青い番傘を差していた。
傍に見える黒い影は、雨女だろう。
「お待ちしておりました、坊ちゃん。
………そして、
けれど、エミを見上げる樺茶色の双眼だけは力強く意志の強さが揺らぐことなく輝いていた。
「言われた通り、加弥ちゃんを連れてきたけど」
不服そうに口を尖らせる
「この依頼は坊ちゃんが引き受けたことになっていますからねぇ」
だからこそ、エミは頭ごなしに拒否し続けていた。
知らなかったとはいえ、真澄は“雨女の
必然的に彼が主体となって行わなければならない。
のだが、まだ子どもな真澄を一人で向かわせる訳にもいかないし、かと言って妖は信用できるわけがない。
真澄の身近で妖事情に聡く融通の効く人物となるとかなり限られる。
と、断言するエミを真澄は怪訝げに睨みあげた。
「…お前はついてこないのかよ「え、もしかして坊ちゃん 寂しい？」んなわけあるか！」
噛みつくように怒る真澄に、エミはいつもの如く謝る欠片のない謝罪の言葉でからかっていく。
それが主の怒りを煽っていることはもちろん知っているから余計に
「エミ様、私にもお手伝いができるって本当、ですか？」
いつものコントで緊張が和らいだのか、今まで固く閉ざしていた口を開いた加弥はポツリと疑問を投げかける。
加弥の問いにエミは頷くと、彼女の前で膝を折って視線を合わせた。
「貴女が坊ちゃんの傍に居てくれれば、必ず戻ってこれます」
だから坊ちゃんを頼みます。
ゆっくりと、されど力強い言葉に 加弥は力いっぱいに頷き「はい！」と応えた。
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